サンタが与えたもの ~ season2 ~ 第四夜

  • 超短編 427文字
  • シリーズ

  • 著者: 3: 寄り道
  • 「彼女って、枡野愛だっけ?」
    「そう。枡野愛の記憶を、取り戻して欲しい」
    「記憶を取り戻しても、お前の死んだことは変わらない。それがどういうことか、分かっているか?」
    「記憶を取り戻し、僕が死んだことを知ったら、落ち込むだろうな。落ち込んで欲しいとも思う。たった、2か月しか付き合ってなかったけど」
    「それでも、記憶を取り戻して欲しい、というのじゃな?」
     栗栖は頷く。
    「それじゃあ、記憶を取り戻す代償として、お前の記憶の一部を頂く」
    「死んだ人間の記憶を頂いて、なんの足しになるのか分からんが、それでもいいなら」
    「それじゃあ」そう言って、幽霊となった栗栖の両肩に手を置き、栗栖もサンタクロースの目をじっと見た。
     サンタクロースは肩から手を外すと、思い切り手を叩き「はい。彼女さんの記憶が戻ったよ」と言ってきた。
    「ほんとに?」
    「儂らは、嘘は吐かん」
    「それじゃあ、彼女の家まで一緒に来てくれるか?」
    「それは願いか?」
    「頼みだよ」
     サンタクロースは、ホッホッホ、と笑っていた。

    【投稿者: 3: 寄り道】

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