「彼女って、枡野愛だっけ?」
「そう。枡野愛の記憶を、取り戻して欲しい」
「記憶を取り戻しても、お前の死んだことは変わらない。それがどういうことか、分かっているか?」
「記憶を取り戻し、僕が死んだことを知ったら、落ち込むだろうな。落ち込んで欲しいとも思う。たった、2か月しか付き合ってなかったけど」
「それでも、記憶を取り戻して欲しい、というのじゃな?」
栗栖は頷く。
「それじゃあ、記憶を取り戻す代償として、お前の記憶の一部を頂く」
「死んだ人間の記憶を頂いて、なんの足しになるのか分からんが、それでもいいなら」
「それじゃあ」そう言って、幽霊となった栗栖の両肩に手を置き、栗栖もサンタクロースの目をじっと見た。
サンタクロースは肩から手を外すと、思い切り手を叩き「はい。彼女さんの記憶が戻ったよ」と言ってきた。
「ほんとに?」
「儂らは、嘘は吐かん」
「それじゃあ、彼女の家まで一緒に来てくれるか?」
「それは願いか?」
「頼みだよ」
サンタクロースは、ホッホッホ、と笑っていた。
コメント一覧