栗栖聖也は教会に出向く。
26日を境に、サンタクロースの姿が見えなくなり、クリスマスになったらまた現れるだろうと予想してのことだった。
「おーい。いるのは分かってるんだ。大人しく出て来なさい」
サンタクロースに呼びかけると「儂は立てこもり犯か!」と言いながら姿を現した。
「26日になったら、何も言わないで忽然と姿消しやがって」
「儂らは、25日が終わったら、お役御免だからな。そりゃあ、住処に帰るさ。てかさ、儂らのことちゃんと分かってる?」
「サンタクロースだろ?」
「そう、サンタクロース。サンタクロースは今年一年、いい子にしていた子どものために、プレゼントを贈るために存在している。それってつまり、子どももいなければ結婚もしていない、ましてや、もう死んでしまった人の前には現れない、現れてはいけない存在なの。分かる?」
「分かってるよ。でも去年、死んではないけど未婚の僕の前に現れたじゃん」
「あの時は、例外じゃよ」
「じゃあ、今回も例外でいいじゃん」
「まあいいか。乗りかかった船だし」
「乗りかかった船って、その船を出船させたのは、サンタクロースだけどな」
「それで、今年の願いはなんじゃ? どうせ、生き返らせて欲しい、みたいなことなんじゃろ?」
「え! そんなことできるの?」
「儂らに、不可能なことはない」
「火葬されて、骨だけになったのに?」
「ああ。てかさ、なんで成仏しないの?銃で殺されたよね。まあ幸運にも、儂の手を叩くのが早かったから良かったものの、数秒遅れていたら、彼女さんを助けるどころか、ただ死んだ訳なんじゃが」
「成仏できるか!こんな状況で」
「それで願いは?」
「まあ、生き返られるということは念頭に置いて、今回は、彼女の記憶を取り戻して欲しい」
コメント一覧