バナナの皮殺人事件

  • 超短編 690文字
  • 同タイトル

  • 著者: ミチャ寺
  • 仕事から家に帰るとバナナの皮が死んでいた。

    * * *

    思わず玄関で立ちすくんだ。どうして、何故バナナの皮が赤い血のようなものを流して倒れているんだ?ゴミ箱を見ればトマトジュースなのは一目瞭然だったが、それにしても理解ができない。
    そして呆然とする俺を見て、妻はニヤニヤと笑っている。
    「ふふふ、どうしたの名探偵。お待ちかねの事件よ?」
    妻の仕業みたいだ。いきなり犯人が分かってしまった。しかし…
    「訳がわらかないから迷宮入りだな」
    「そんなバナナ!ちゃんと推理してよ!」
    仕事の鞄を渡して一旦部屋に着替えに入る。
    「先に風呂に入っていい?」
    「熱々にしておいたわよ」
    「熱湯なのか…水で少しうめてから入ることにするよ」
    折角なので適温になるまで推理してみることにした。
    妻は何がしたかったのか。
    そもそも何故バナナなんだ。昨日買ったが俺は食べてない。妻も特別好物だったワケでは無かった以上、怨恨(食べ物の恨み)の線は薄い。
    何か悪いことをしただろうか。悪だくみをするのは大抵妻なので、少なくとも身に覚えがない。
    そもそもどうしてバナナの皮なんだ?
    バナナを買ったのが昨日のことである以上、バナナにメッセージが込められている場合は今日の出来事に限定される。俺が関わるとしたらさらに今朝に絞られて………
    俺は風呂上がりに、妻に謝ることにした。
    「……朝ごはん食べてなかった。
    あの朝食用のバナナを"殺した"のは、俺だったってことか」
    「早起きして作ったんだけどなぁ…超ショックだったんですけど。朝食だけに…なんちゃって」
    妻はチラチラと俺の方を見つつ、そのひと言を待っていた。
    「…ゴメンなさい」
    「よろしい。さて、晩ご飯にしようね」

    【投稿者: ミチャ寺】

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    コメント一覧 

    1. 1.

      なかまくら

      バナナが死んでいた! やられたっ!と思いました。
      ユーモアがあって、それを解するいい夫婦ですね~~。


    2. 2.

      けにお21

      朝ごはんで出されたバナナを食べなかったため、無残な姿に・・・

      奥さんのナイスなアイデアですねー

      バナナを殺す、って逆転の発想がユニーク

      話の組み立ても自然でした!


    3. 3.

      鉄工所

      冒頭から殺しの旋律…
      いや題材通りで王道ですね。
      そして、ミステリアスな展開
      でも、朝食だけに 超ショック!
      思い切り壺には入りました(笑)