リフティング

  • 超短編 1,640文字
  • 恋愛

  • 著者: 参謀
  • サッカーボールが宙に舞っていた。そして地に向かって落ちる。落ちる瞬間に膝がサッカーボールを跳ね上げまた宙に舞う。金田里美はサッカーボールでリフティングをしていた。

    「リフティング。上手いな」

     坂江圭太はサッカーボールを目で追いながら言った。

    「そうでしょ」

     サッカーボールがまた地に向かって落ちるが膝がまた跳ね上げる。
     
    「さすがだな」

     圭太は笑う。

    「私の腕はさらに上がってるわよ」

     里美はサッカーボールを高く上げてタイミングを合わせて思いっきりとサッカーボールに蹴りを入れ込む。
     サッカーボールは勢いよくゴールポストの網に入る。

    「ナイスだな」
    「そうでしょ。私のシュート!!」

     里美は圭太にVサインをする。

    「そして白かったなあ。お前のパンツ」
    「は!!」

     里美は下を見た。制服のスカートが見えた。

    「圭太ーーー」

     里美はズカズカと圭太の前まで来て頬をつねった。

    「痛いーーー」
    「忘れないーーー」
    「分かったから頬をつねるのは止めてくれー」

     圭太の哀願に里美はつねるのを止める。

    「ラッキースケベできたんだから今日は何か奢りなさいよ」
    「はいはい。俺のお小遣いで払える中でな」

     圭太はそのまま歩き始めてゴールポストにあるサッカーボールを手にする。
     里美は圭太がじーとサッカーボールを見てるのを見ていた。
     圭太と里美は小中高と同じ学校で腐れ縁の中である。
     高校の帰り道。いつも通る広場にサッカーボールが転がっていた。なんとなく触っていつの間にか里美はリフティングをしていた。
     
    「圭太......」

     里美はゆっくりと圭太の近くに寄った。

    「俺はこのサッカーボールに人生をかけようと思ってたんだよな」
    「......」

     圭太の言葉に里美は何も答えれなかった。
     二人は小さい頃からサッカーをしていた。男の子の中に里美も混じり朝から晩までサッカーをしていた。小学校も二人はサッカー部に入っていた。
     二人とも上手く双璧と呼ばれた。しかし中学校では圭太は当たり前のようにサッカー部に入ったが女子にはサッカー部はなく仕方なく里美はサッカー部のマネジャーになった。 
     二人は暇さえあれば二人はサッカーをしていた。中学では必然的に噂になったが二人は全然その気はなかった。
     そして高校へ。そこは男子サッカー部と女子サッカー部があり二人は自動的に入部した。
     二人は一年で選手として抜擢され地区大会・県大会と勝ち続けてきた。しかしニ年の時に圭太は試合で足を怪我をしてサッカーが出来なくなった。

    「しかし、まあ里美のお蔭でなんとか立ち直れたけどな」

     一時は不登校になったが里美が強引に学校に行かさせていた。

    「そりゃあ、圭太が落ち込んでると私は面白くないからね」

     里美は圭太が持っているサッカーボールを取り、またリフティングを始める。そこからだ。二人は自然と付き合い始めたのは。

    「なぁ、里美、覚えてるか?」
    「なにが?」
    「里美はサッカーを続けてくれと」
    「覚えてる」

     里美はリフティングを続けながら言う。圭太が学校に再び行く時は条件を言った。【里美はサッカーを続ける事】と

     そして里美は選手として部活の部長までなり引張っている。

    「里美は悩んでるだろう」
    「うん」 

     サッカーボールが激しく宙に舞う。
     里美には女子サッカーとしての選手としてのオファーが来ていた。しかし里美はそれをすぐに受け入れる事はできなかった。いくらサッカーに自信があるとはいえプロとてやっていく自信まではない。

    「悩んでる。でもそれは圭太から見れば贅沢な悩みかな?」
    「里美」

     サッカーボールが高く宙に舞った時に里美は圭太に抱かれていた。

    「俺のあの時に約束を頑と守れとは言わない。それは里美の人生の選択であり俺はとやかく言える立場ではない。でも、もし里美がサッカーを続けるなら俺は全力でお前を応援する。俺の夢を繋げてくれる為に」
    「夢......」

     サッカーを続ける夢。圭太はもうできない。でも。

    「私は」

     里美は圭太の近づいてくる顔を見る。まだ迷ってる。でももう少しその悩みも無くなるだろう。里美の耳にサッカーボールが地面に落ちる音が聞こえた。

    【投稿者: 参謀】

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    コメント一覧 

    1. 1.

      なかまくら

      ぽーんぽーんと繰り返されてきたリフティングが終わるときに、
      ふたりは大きく進展するのでしょうね。
      里見にとって、それが2人の夢に変わってくれることを願うばかりです。


    2. 2.

      参謀

      なかまくらさん

       返事が遅れてすいません。コメントありがとうございます。自分のお題で近くで遠いというのを考えて書いたものです。