タイムマシンの罠

  • 超短編 967文字
  • 同タイトル

  • 著者:1: 3: ヒヒヒ
  •  タイムトラベラーに会ったなら、ためらわずに聞いてみよう。

     平成の次って何ですか?

     私が出会った四人のトラベラーは、みんな違う答えを返した。

    「パラドクスが怖くて言えない」

    「戦争が起きてうやむやに」

    「平成は終わらない」

     彼らが本当のことを言っているのなら、平成三十年五月現在、

    新年号はまだ、確定していないらしい。



     他方、タイムトラベラーがいないことは、故ホーキング博士の実験でわかっている。

     彼はパーティーを開き、それが終わった後に、未来へ向けて招待状を出した。

     パーティには誰も来なかった。だからタイムトラベラーはいない。証明終了。

     ホーキングが端的に示した、人類の限界。

     それと、タイムトラベルの可能性について語った十一の理論。

     それら全てがこう結論している。「人類には早すぎる」




     ただ、四人のうちの一人だけは、他のトラベラーと違う答えを返した。

    『年号の候補は十一個ある。

     好きなものを言ってくれ。その年号が採用されるよう、歴史をねじ曲げて見せる』

    「そんなことができるのですか? それはすごい、まさに神のごとき力だ」

     その青年は肩を落とした。まだ二十代半ばに見えるのに、その目は驚くほど老いていた。

    『どの年号になろうと、俺には関係ない。

     俺は十一の時代、すべてを回った。だけどそのどこにも、あいつはいなかった。

     俺は、あいつがいる未来に、到達できなかった』




     史上最初の飛行機製作者、ライト兄弟が初飛行を成功させたのは

    1903年。彼らが成功するまで、多くの発明家が新技術の確立に挑み、手痛い失敗を被った。

     史上最初のタイムマシン製作者、大学教授のアレクサンダー・ハーデゲンが

    自身のマシンを完成させたのは、1894年。彼はどうしても死んでしまう恋人を救うため

    絶望的なタイムトラベルを何度も繰り返し、敗北した。



     過去なんて変えようがないことは、誰もが、その経験上知っている。

    だけどライト兄弟が現れるまで、誰もが「空なんて飛べっこない」ことを知っていたのではないか。

     タイムマシンで人を救うことができないことは、誰もが、その経験上知っている。

    平成三十年現在、「タイムトラベラーが恋人を救出した」というニュースは聞かれていない。

     だからこそ、と僕は思う。

     彼は必ず、十二個目の道を見つけるだろう。ホーキングが示した限界を超えて、十二個目の時代、

    まだ誰も知らない時代に、たどり着くだろう。

    【投稿者:1: 3: ヒヒヒ】

    一覧に戻る

    コメント一覧 

    1. 1.

      なかまくら

      トゥルーエンドを探しているんですよね。
      諦めなければ、夢は叶う・・・か、夢を抱いて死を迎えるか。
      超ひも理論からの11次元が絡んできて、にやっとしました。