「みなさん。いよいよ明日が運動会です」
* * *
みんなワクワクしながら朝倉先生の話を聞いている。それが運動会への期待から来るものなのか、もうすぐ帰宅できることから来るものなのかは分からないが、視線が一点に注がれている様子をは団結したように見えて面白い。
先生もそれが嬉しいのか、笑顔で言葉を続けた。
「明日の本番に向けてしっかり休んでもらいたいので…
なんと、今日の宿題はひとつだけ!今晩は早く寝て、明日元気に登校してください!」
おおぉ、と歓声が上がり、先生は得意げにしている。
小学校に入学して早半年、これまでこんな事があっただろうか。
明日は運動会。練習に練習を重ねた成果を発揮する特別な日。
家に帰ってもそのドキドキは止まらない。夕飯の食卓にはトンカツが並んだ。
「幸希が明日頑張れるようにね」
母が言うには「カツ」と「勝つ」をかけたエンギモノらしい。イマイチよく分からなかったが、激励の気持ちは嬉しかった。
言い表しようのない特別感は、夜になっても溢れるように湧いていた。
この目を閉じ、眠りについたあかつきには、もう特別な1日は始まってしまう。
そう思うと緊張して中々寝つけなかったが、唯一の宿題故、ぎゅっと目を閉じた。
夢の先に、今宵の先に。特別な1日が
もうすぐ 始まる。
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