冬休みにビールを飲みながらベランダにいた。だいぶ寒くなったが、本が面白いので、チェアに座って、膝掛けをしてじっとして本を読んでいた。ところで、夜については、あたしは知らない。いずれはやってくるものだとしか。だいたいにおいて、あたしが本に飽き、それから彼がやってくる頃に夜が始まるのだという。
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ビールはもうぬるくなってしまった。僕は少しだけ背伸びをする。それから、近いようでいて彼方の彼女をみる。その背中を。きれいな背中だ。彼女の名は1984。やわらかく、途方も無い名前だ。夜に飽いた彼女の胸を伏せる、もう劣情は必要ない、沈黙をのぞむ。するともちろん静謐は僕たちを覆った、冬休みがはじまった。
コメント一覧
ちくたくさんの投稿はどんなのかなと、いつも楽しみにしています。
この作品の色というか色調は私の好きなものです。
ちくたくさんこんばんは。1984と言えば、それは歴史や記憶をどんどんと書き換えていくお話なわけで
と言うことは彼と彼女の記憶も、もうすでに書き換えられた後なんだな、と読みました。
伏せられた本には、いったい何が書いてあったんでしょうか。
ご一読ありがとうございます。
>howameさん
気に入って頂いて幸いです。スケッチですが、ちょっと深く掘り下げたいところがあるので、楽しんでいただけていると励みになります。
>ひひひさん
深読みありがとうございます。書いた当人としては、丸裸にされたような気分で恐縮です。テーマとしては、なんだろう、忘却する記憶の図書でしょうか。