「また10年後ここに集まろう」
そう言ったのは、当時の委員長だった。皆で「おー」と大声を出していたら、片思いをしていた女性に、ここに来るように、と呼び出された。
指定された、桜の木の下で待っていると、その女性が来て、会う早々
女「10年後、もしまだ互いが独身なら、ここの桜の木の下で待っています」
唐突に言われて頭が真っ白になりかけたが
男「分かった。約束な」
と言った。
― 10年後 ―
男「悪い。大事用事があるからここで失礼するわ」
久々に会った友人に別れを告げて、例の桜の木の下に行った。
そこには大人びた女性が1人立っていた。大人びているが正しく片思いしていた女性だ。
女「来てくれたんだ」
男「うん」
女性は僕の左手の薬指を見て目を丸くした。
女「そっかあ。10年って短いようで長いんだね」
と寂しげな声で話した。
男「ごめん。折角、待ってくれていたのに」
女「うんうん、謝らないで。私、ここで泣きたくないから」
男「ごめん」
もう一度言う。
女「だから謝らないで。幸せにね」
涙を堪え、振り絞って出た声だった。
男「ありがとうな」
女「貴方の幸せは、私の幸せだから」
男「ありがとう」
女「最後に訊いても良いかな?」
男「何?」
女「結婚の相手って私の知っている人?」
男は後ろのポケットに手を入れて、持っていたものを女性に見せ
男「お前だよ」と自分の嵌めている指輪と同じ指輪を見せた。
女性は我慢していた涙を一気に流した。
桜の木の下に座る二人。
女「ねえ、なんで謝ったの?」
男「その方が、君を驚かせるかなって」
女「私が相手が誰か訊かなかったら、こんな展開になってないじゃん」
男「良かったよ。上手くいって」
女「学生時代の頃から思っていたけど、本当、バカだよね」そう言って、笑う彼女。
男「バカってなんだよ」彼女を見つめる。
女「ちょっと待って」男に顔を近づけ「肩に桜の花びら、落ちてた」と親指と人差し指で摘んだ花びらを、男に見せた。
その瞬間、男は桜の花びらを持っている手を掴み、女性を強引に引き入れ、桜色の唇にキスをした。
「お〜い、そこのお熱い、お2人さん」遠くから親友が、2人に呼びかける。「2次会行くけど、どうする?」
男「行くに決まってんだろ。どうする?」彼女に訊く。
女「行こうか!」
2人は手を繋ぎ、親友に駆け寄る。
10年待ってようやく結ばれた2人を祝福するかのように、今年も綺麗に桜が舞っていた。
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