虚ろ

  • 超短編 812文字
  • 日常

  • 著者: 春火
  • 私の毎日は、いつも虚ろで居て何も無い。
    起きて、食べて、寝る。
    寝れなかったときは、昔撮りだめしていたビデオなんかを見る。
    全然面白くないけれど、時間は潰れるし動かないから楽だ。
    偶に、ニュースを見るけれど馬鹿なメディアが馬鹿な聴衆を騙そうとしている風にしか見えない。
    笑顔をみるたび吐き気を催すから、私はテレビが嫌いだ。
    決まった映画、決まった本、決まった生活で私は満足している。
    満たされているのか、というと首をかしげるがこれ以上の生活は望んでいない。
    私が望むモノがあるとすれば、それは"死"。できるだけ、楽な死に方が良いな。
    まあ、自殺するつもりも湧かない。
    死ねないから生きてるだけ。其れの何が悪い。
    私はニートだと社会から見れば、痛々しい姿をさらしている自覚はある。
    けれど、私は鬱病だし、皆が皆おまえらのように一般に溶け込めるはずがない。
    まあ、後ろ指さされても別に構わないんだけどね。
    本当にどうでも良い。精神科の先生の言うように、「外に出なさい」とか「本を読みなさい」とか全然やる気が出ない。
    だって、先生は私ではないものね。
    私になってみたら、先生だって分かるはずよ。まあ、私は睡眠薬が欲しいだけだから、別に良いけどね。
    抗うつ剤なんて飲んでも何も変化無いし、まあ、副作用の強烈な眠気には惹かれるけどね。

     でも、夢は見るのよ。睡眠薬を使っていても。
    其処で、私は笑っていて誰かに手を引かれている。その力強い手の先を除こうとすると、目覚めてしまう。
    私は決まってこういう。「なんだ、夢か。くだらな。」
    こんなヤリトリを既に何回かしてる。けれど、ふと頭をよぎるのよ。
    どうすれば、こうならなかったんだろう。どうすれば、、、まあ、考えるのも面倒くさいからこの辺でやめとこう。



    はぁ、、、、どうすれば。


    白樺雪菜(しらかば せつな)は息を「ふう」と吐くと、ノートに向けていたペンを置いた。

    「どうすれば・・・。」

    独り呟いた其の声は、誰に届くこともなく虚空に溶けた。


    【投稿者: 春火】

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    コメント一覧 

    1. 1.

      なかまくら

      >誰かがその声を力強く掴む。
      >温かくて温かくてたまらないその手の温度に自分が冷え切っていることにようやく気付いた・・・。

      すみません、勝手に続きを妄想してしまいました。そんな救いを求めてやまない・・・そんな気がしました。
      自分のことを打ち明けられることが出来れば、きっといいことが始まります。それが一番難しいのでしょうけどね。
      真に迫る独白に、胸が苦しくなるようでした。


    2. 2.

      春火

      >>なかまくら
      コメントありがとうございます。
      すごくいい続きですね。
      そうですねえ・・・自分を表現できる場があったりすると、"多様性"という黄金を早々に見つけられるのですがね。