「愛してる」
「今なんて言ったの?」
「(うわぁ、マジか。この女。俺にもう一度、あんな恥ずかしい告白、言わすのか)」
「えっと・・・愛してる」
「大きな声で」
「からかうな!」
「聞こえなかったんだから、しょうがないでしょう」
くっきりはっきり、言ったはずなのに、そう思いながら、そして今度はちゃんと聞き返されぬように、さっき伝えた思いを大げさに変えて
「結婚しよう」
こう言った。
「さっきと言ったこと違うじゃん」
「しょうがねーだろ。聞こえない、って言われたんだから。ってか、聞こえてたんじゃん」
「すっごい、いきなりだね」
「先月から、ずっと言おうと決めてたんだ」
「そうなの?」
「たくさん、君と思い出を作って、たくさん笑って、たくさん泣かせてきた僕だけど、この気持ちに、嘘偽りはない」
「ちょっと待って、そんなすぐに決められないよ」
「次、会ったときにでも、答えを聞かせてくれればいい」
照れて、顔を赤らめている彼女が、物凄く可愛く見えた。
とりあえず、今日のところは、答えが聞けぬまま、別れることになった。
何をするにしても手につかなかった。LINEを送っても既読は付くけど、返信がない。
滲んだ感情のまま、時が過ぎた。
濡れぬ先の傘、とはいかなかった告白。
寝れぬ日々が幾日か続き、彼女から「明日、会おう」とLINEが届いた。
飲み屋の帰り、彼女に告白した場所にもう一度来て、答えを聞いた。
「はい!」
日は暮れ、2人だけの空間に、その答えが響いた。
不安しかなかった、ここ数日。
平凡だった毎日が、彼女のお陰で、彩り豊かになり、さらにこれから、何色もの色彩が足されることが、嬉しくてたまらなかった。
「ほんとに?」
まじまじと彼女の顔を見る。
耳まで真っ赤にした彼女。照れているのはこの間と同じだが、どこか違う。決意に満ちた感じがする。
無理だと思った告白。
目に涙を浮かべているのを恥ずかしくなり、手で拭う。
「もう一度、告白させて欲しい」
「やっぱり、そう言うと思った」
ゆっくりと深呼吸をする。
夜空は満天の星。
来週に、婚姻届を出すことに決めた。
旅行の計画も立てた。
ルビーが好きな彼女のために、婚約指と結婚指は、その宝石に決めた。
連日のように、結婚の話をしているひと時が、物凄く幸せに感じた。
6月。ジューンブライド。この日に、僕たちは結婚した。
ワクワク、ドキドキな結婚生活を祝福するように、挙式の鐘が鳴り響いた。
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