Forty - four Lover Story

  • 超短編 980文字
  • 恋愛

  • 著者: 3: 寄り道
  • 「愛してる」

    「今なんて言ったの?」

    「(うわぁ、マジか。この女。俺にもう一度、あんな恥ずかしい告白、言わすのか)」

    「えっと・・・愛してる」

    「大きな声で」

    「からかうな!」

    「聞こえなかったんだから、しょうがないでしょう」

    くっきりはっきり、言ったはずなのに、そう思いながら、そして今度はちゃんと聞き返されぬように、さっき伝えた思いを大げさに変えて

    「結婚しよう」

    こう言った。

    「さっきと言ったこと違うじゃん」

    「しょうがねーだろ。聞こえない、って言われたんだから。ってか、聞こえてたんじゃん」

    「すっごい、いきなりだね」

    「先月から、ずっと言おうと決めてたんだ」

    「そうなの?」

    「たくさん、君と思い出を作って、たくさん笑って、たくさん泣かせてきた僕だけど、この気持ちに、嘘偽りはない」

    「ちょっと待って、そんなすぐに決められないよ」

    「次、会ったときにでも、答えを聞かせてくれればいい」

    照れて、顔を赤らめている彼女が、物凄く可愛く見えた。

    とりあえず、今日のところは、答えが聞けぬまま、別れることになった。

    何をするにしても手につかなかった。LINEを送っても既読は付くけど、返信がない。

    滲んだ感情のまま、時が過ぎた。

    濡れぬ先の傘、とはいかなかった告白。

    寝れぬ日々が幾日か続き、彼女から「明日、会おう」とLINEが届いた。

    飲み屋の帰り、彼女に告白した場所にもう一度来て、答えを聞いた。

    「はい!」

    日は暮れ、2人だけの空間に、その答えが響いた。

    不安しかなかった、ここ数日。

    平凡だった毎日が、彼女のお陰で、彩り豊かになり、さらにこれから、何色もの色彩が足されることが、嬉しくてたまらなかった。

    「ほんとに?」

    まじまじと彼女の顔を見る。

    耳まで真っ赤にした彼女。照れているのはこの間と同じだが、どこか違う。決意に満ちた感じがする。

    無理だと思った告白。

    目に涙を浮かべているのを恥ずかしくなり、手で拭う。

    「もう一度、告白させて欲しい」

    「やっぱり、そう言うと思った」

    ゆっくりと深呼吸をする。

    夜空は満天の星。

    来週に、婚姻届を出すことに決めた。

    旅行の計画も立てた。

    ルビーが好きな彼女のために、婚約指と結婚指は、その宝石に決めた。

    連日のように、結婚の話をしているひと時が、物凄く幸せに感じた。

    6月。ジューンブライド。この日に、僕たちは結婚した。

    ワクワク、ドキドキな結婚生活を祝福するように、挙式の鐘が鳴り響いた。

    【投稿者: 3: 寄り道】

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