prologue 兄妹

  • 超短編 2,572文字
  • シリーズ

  • 著者: リオン
  •  清々しい朝日が照らす町。
     無数の家の窓から、その朝日が射し込む。
     「ふわぁ…」
     「おっ、おはよう小百合。」
     「うん、おはよう…、お兄ちゃん…。」
     眠たい目を擦りながら、リビングに足を踏み入れる、七宮 小百合(ななみや さゆり)。
     その兄である快斗(かいと)。
     二人は高校生であり、二つ歳が離れた兄妹。
     二人は兄妹関係でも仲が良い。

     「小百合、兄ちゃんはもう準備できたから、急げよ。」
     「ん~、ちょっと待ってて~。」
     朝食を食べ終えた所、小百合は身仕度をし、髪を結んでいる最中だ。
     小百合は朝に弱いため、髪を結ぶスピードも遅い。
     「はぁ…、しょうがないな…。」
     「ん?お兄ちゃん?」
     「櫛、貸してみ。」
     「あ、うん…。」
     快斗はそう言うと、小百合から櫛を受け取り、小百合の髪をとかす。
     小百合は長髪のため、髪をとかすのにも時間がかかるよう。
     「小百合、そろそろ髪切った方がいいんじゃないか?」
     「え~、切りたくないよ~。」
     確かに、小百合の髪は腰まで伸びてきていた。
     これでは髪をとかすのも大変だ。
     「そんな事言ってられないだろ?今度床屋にでも行ってきな。」
     「む~…。」
     小百合は頬っぺたを膨らまして不貞腐る。
     それほど髪を大切にしていたのか。

     「おう、快斗!」
     「うぃす。」
     8時の教室。
     快斗の友達である一之瀬 太臥(いちのせ たいが)が、快斗に駆け寄った。
     快斗のクラスががやがやと響き渡る。
     その中で快斗が一番静かだ。
     「お前今日テンション低くね?大丈夫か?」
     「これが普通だよ。悪いか?」
     「別に悪くねえけどさ…。」
     快斗は机にうつ伏せになる。
     快斗は一応、太臥達よりあまりわいわい騒ぐ方ではない。
     誰よりも静かに暮らしていきたい…そんな性格だった。
     「おはよ、快斗君!」
     「おう。」
     「おっす、莉沙!」
     快斗と太臥の昔馴染みである東間 莉沙(あずま りさ)。
     柔らかそうな髪を揺らしながら、莉沙も駆け寄る。
     「そういや快斗、最近小百合ちゃんとはどんな感じだ?」
     「昔から変わってねえよ。自堕落のままだ。」
     「え~?小百合ちゃん大丈夫なの?」
     「俺はそれでも平気だけどさ。」
     妹である小百合は、快斗にとって自堕落だ。
     すぐに怠けるお調子者だが、信頼されているなら何だっていいと、快斗自身はそう思っている。
     「小百合ちゃんに久々に会ってみたいわね。うち、弟がうるさくてさ…。」
     「じゃあさ!今日快斗ん家行かね?」
     「は?何でいきなり。」
     「あ、それ私も思ってた!小百合ちゃんにも会いたいしね。」
     「二人とも、小百合目当てだろ。」
     この二人は絶対に妹目当てだと確信した快斗。
     昔から知り合ったものなので、太臥と莉沙が小百合に会いたがる気持ちもわからなくもない。
     快斗はそう思っていた。
     「別にいいけどさ、小百合はいきなり顔出してもリアクション薄いぞ?」
     「えぇ、そこがいいじゃない。」
     「ちょうど午前授業だけだし、快斗もいいだろ?」
     「あぁー。」
     快斗は腑抜けた声で返事をした。
     快斗は友達と一緒に過ごすのは嫌いではない。

     「「おじゃましまーす!」」
     学校が終わり、七宮家に訪問した太臥や莉沙。
     「あ、お兄ちゃんお帰り…あれ?」
     「小百合、今日は太臥と莉沙が遊びに来たからな。」
     「小百合ちゃん、久しぶりね!元気してた?」
     「うん。まあ…ね。」
     小百合は急に彼らと目が合ったせいか、少々もじもじしていた。
     「小百合ちゃん、いつの間にかこんなに背が高くなったな。俺が想像してたのと全く変わってるぜ。」
     「そ、そうかな…。」
     「あ、赤くなってる!小百合ちゃん可愛い~♪」
     「……。」
     莉沙に抱き締められ、小百合は黙ってしまった。
     「まあ、小百合は昔結構ちっちゃかったからな。今はこんなに体が成長しているよ。」
     「確かに!なんか小百合ちゃん、胸大きくなったね!」
     「あっ、ちょ…!」
     小百合の体が成長している事を聞かれた莉沙は、突然小百合の胸を触り始めた。
     恥ずかしさのあまり、小百合は顔を真っ赤にさせる。
     「おい莉沙、小百合ちゃんが可哀想だろ?」
     「ううん、大丈夫…。」
     「太臥、莉沙、お前達は部屋に行っててくれ。」
     「はいよ。」
     「はーい♪」
     快斗は台所へ向かい、太臥や莉沙は快斗の部屋へ向かった。
     小百合もその場を離れ、自分の部屋へ向かう。

     「……。」
     小百合は自分の部屋に足を踏み入れると、胸を押さえてドアに寄りかかっていた。
     (そんなに胸…、おっきくなったかな…。)
     今思うと、結構恥ずかしくなる小百合。
     息も少し弾ませていた。

     一方、こちらは快斗の部屋。
     快斗達は、自分達の昔の写真を見ていた。
     「あ、これ懐かしいな!」
     「確かこれ、小4の時だっけ?」
     「小百合ちゃんもこんなにちっちゃかったんだなぁ。」
     「…お前ら小百合のばっか見てるけど、大丈夫か?」
     確かに、太臥と莉沙は昔の小百合しか見ている模様しかなかった。
     「大丈夫!ちゃんと快斗君のも見てるから♪」
     「そういう問題かよ。」
     莉沙はピースをするに対して、快斗は溜め息をついた。
     「あ、これは俺達の卒業写真だな。」
     「何だかんだ言って、小学校もなかなかのもんだったよな。」
     「まあな。こん時、小百合は俺が恋しくて泣いていたな。」
     「二つ歳が離れてるんだっけ?快斗君と小百合ちゃん。」
     「ああ。」
     「でも、小百合ちゃんの可愛さを知ったのは、中3くらいかな。それより前は知らなかったもの。」
     「それくらい前だったか?」
     「もちろんよ。快斗君と同じクラスになったのも、中学で初めてだったし。」
     実は莉沙は、小学校で快斗と太臥と離れてしまったのだ。
     しかし、中学校に入学してから再会し、再び三人で過ごす時間が蘇った。
     「高校決める時も皆同じ意見だったし、俺達ってなんか似てるよな。」
     太臥はそう呟いた。
     それを聞いた快斗も、少し笑った。

     「……。」
     一方、小百合は快斗の部屋の前で立ち止まっていた。
     三人の笑い合う声が聞こえる中、小百合は下を向いて黙っていた。

     数時間経つと、太臥と莉沙は帰宅した。
     「あいつら帰ったよ。」
     「あ、うん…。」
     小百合はリビングのソファーに腰を掛けていた。
     その上、小百合は何かぎこちない様子。
     「…?小百合、どうかした?」
     「…。あ、ううん、何でもない。」
     「そうか?何かあったら兄ちゃんに言えよ?」
     「うん…。」
     「さて、母さんも遅いから、先に夕飯食ってようぜ。」
     「うん。」
     快斗がそう言うと、小百合は立ち上がり、台所へ歩み出す。
     小百合にとって、快斗はどのような存在なのか、兄としてどう関わるのかは、未だまだ知らない。

    【投稿者: リオン】

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    コメント一覧 

    1. 1.

      なかまくら

      まだ、これからという感じですね~。「」の前に名前書かなくても、誰の台詞か分かりました~。
      カードキャプターさくらみたいな感じがしました^^。これからどうなっていくのかなぁ。


    2. 2.

      リオン

      なかまくらさん》
      コメントありがとうございます♪
      カードキャプターさくらwそれは笑いましたww
      この兄妹がこの先どうなっていくかは、作品が出るまでのお楽しみです♪