「UFOキャッチャーってよ」
驚いた。目の前でクレーンのアームに首根っこをつかまれたグレイの宇宙人が、突然しゃべり出したのだ。
「攫われるゲームなんだよ」「あ。」
アームが力なく、落とす。
「おーい」
宇宙人は喋らない。ただ、眼差しは感じた気がして、コインを追加する。楽しげな音楽とともに、アームが再びターゲットに接触する。宇宙人は、大人しく腕をぶらーんと提げてこちらを見る。
「俺が落ちてきてからもうどれくらい経ったかな・・・気が付いたら、此処にいた。此処以外での生き方など、最早分からないのさ」
クレーンが今度はしっかりと宇宙人を運んでいく。
「君はすごいな、行くのかい。生きていく覚悟が決まったんだな」
宇宙人はストンと消滅し、声だけが残った。
音楽が戻ってくる。
馴染んだスティックから手を離すと、アクリルガラスに半透明の自分の姿が映る。
洗い立てのスーツが宇宙服のように、ふわふわと浮かんでいた。
コメント一覧
UFOキャッチャーの景品に意識があったら••••••面白いアイデアですね!
僕らにはただ『積まれてる』だけしか見えないけど、実は様々なやり取りがあったりして笑
と言いながら振り返ってみると、僕らもアクリルのアクリルのガラスに囲まれていたりして••••••
400字で書くと取捨選択の難しさと面白みが出てきますね!
ユーホーキャッチャーで生の宇宙人を吊る、と言う発想が面白かったです。
しかし、景品から話しかけられるとビックリしますね~
>飛火疲さん
感想ありがとうございます。そうなんですよね、我々もまた大きな視点から見たら、ただ、積まれているのかもしれません。そういう発想って、短編の王道って感じがしますね。
>けにおさん
感想ありがとうございます。短ければ短いほど、発想の勝利になってしまいがちですね。それが良いのか悪いのかは難しいところですね。