BAD END

  • 超短編 2,551文字
  • シリーズ

  • 著者: リオン
  • ※この話はバイオハザード7の番外編でもあり、バッドエンドでもあります。「合流、そして恐怖」で変異した脩司を倒した所から始まります。

     少し先に進むと、冬斗と諒がいた。

     二人とも無事だ。

     麗奈「血清を使ったわ。あと一つしかない…。」

     冬斗「残ったのは一つだけ…?一人分しかないなんて…。」

     諒「…これからどうするんだよ…。」

     本当は二人に血清を打ちたかった。

     これは、もうどちらかに使うしかない。

     私は仕方なく…。


     諒「うっ…!」

     冬斗「…!」

     諒を選んだ。

     私が水島邸を脱出するために、諒が協力してくれたから。

     本当は、冬斗も助けたかった。

     麗奈「ごめんなさい、許して…。」

     麗奈「諒に安全な場所まで案内してもらって、後であなたを助けるから…。」

     血清を自分に使わなかった冬斗は、酷く悲しんでいた。

     冬斗「…行って。」

     冬斗は私を睨み、口を開いた。

     冬斗「…聞きたくない。二人とも早く消えてよ!!」

     冬斗は私を押し退け、険しい表情で涙を流していた。

     麗奈「冬斗…!」

     冬斗「早く行ってよ!!」

     もうダメだ。

     何を言っても、冬斗は否定する。

     冬斗「僕の居場所はここだよ。あの子と一緒だ。」

     麗奈「馬鹿な事言わないで!」

     私は、感情を剥き出して冬斗を怒鳴った。

     冬斗だって助けたいのに、何故そんな事を言い張れるワケ?

     そんなのありえない。

     冬斗「…忘れたの?僕にはまだ仕事があるんだ。」


     麗奈「…助けを送るから。」

     冬斗にそう言い告げ、諒と共にボートで沼を渡った。


     諒「…ありがとな…。俺を選んでくれるなんてさ…。」

     麗奈「冬斗はもう変わってしまったわ。私達ならここから脱出できるはず。」

     諒「…そうだな。」

     冬斗を置いて、私は諒と沼を渡っていく。

     冬斗は…、未だ悲しんでると思う。


     麗奈「一体何が起こってるの?冬斗に何があったの?」

     諒「冬斗がエヴリンと来たのが、全ての始まりだ。」

     麗奈「エヴリン…、あの子ね。」

     麗奈「冬斗は何か知ってたのね。」

     冬斗は以前、そのエヴリンって子の事を知っているのか、私は今まで知った事がなかった。

     冬斗とエヴリンの間に、何かあったのね…。


     諒「あれだ。冬斗とエヴリンはあの船に乗ってきたんだ。」

     麗奈「え…?あの船で…?」

     沼に沈下していた船。

     冬斗はそこで何かがあったはずだった。


     麗奈「行ってみましょ。」

     諒「…あそこには戻りたくないんだ。」

     諒も、ここで何かあった事を知っている…?

     そうなれば、諒は何者なのか。

     麗奈「何があったのか知りたいのよ。」


    ガタンッ!

     麗奈・諒「…!?」

     麗奈「今のは何!?」

     突然ボートが急に止まった。

     何かが沼の中にいる…!?

     諒「あの子だ…。俺達を逃がさない気だ…!」

     エヴリンの力で、ボートが止まる…?

     そんな力もあったの…?

     諒「う″ぅ″ッ!!」

     諒「嫌だ…!やめろ…!エヴリン…!」

     諒「お願いだ…!エヴリン…!!」

     突然、諒が苦しみ始めた。

     そして、諒の体から白い塊が浮かび上がった。

     諒「そんなつもりじゃ…なかったん……だ………。」

     やがて、諒は固まり始め、遂には動かなくなった。

    ザパアァッ!!

     麗奈「何よこれ!」

     何が起きてるのかわからず、衝撃に巻き込まれ、私は流されてしまった。

     あれは何だったのか。

     私の意識は、ここで途切れてしまった…。

    (ここから「謎の少女」の冬斗sideから「水島家の真実」の麗奈が精神世界から目覚めた所までカット)

     冬斗の声『エヴリンやめろ!お姉ちゃんから離れろ!』

     エヴリンの声『何で?こいつはお前を愛していない。私が愛させてあげようか?』

     冬斗の声『やめろ!お姉ちゃんに触るな!』

     エヴリンの声『麗奈を傷つけるのは私じゃないって言ったでしょ?』

     冬斗の声『お姉ちゃんに何かしたら…!』

     エヴリンの声『どうする気?お前はお兄ちゃんじゃない。そう言ったよね?』

     冬斗とエヴリンの声が聞こえる…。

     私…、生きてるの…?


    メキィッ…!

     麗奈「うっ…!」

    メキィッ…メキィッ…!

     麗奈「うぅっ…!」

     塊が剥がれる音が聞こえる。

     もしかして…!


     冬斗「くっ…!」

    メキィッ!

     麗奈「うぐぅっ…!」

     私は目を覚ますと、目の前に冬斗が抱き締めていた。

     麗奈「冬斗…?どうして…?」

     冬斗「時間がないんだ!これを…お姉ちゃんに…!」

     冬斗から何かを受け取られた。

     下を見てるヒマなんてなかった。

     冬斗「もう耐えられそうにない…!限界だ…!」

     冬斗は苦しんだ。

     もしかして…、エヴリンのせいで…?

     精神世界で脩司が言い残した言葉も、冬斗にも同じく操ったって事…?

     そして、冬斗は私を押し退け、ナイフを構えた。

     冬斗「僕の事…、愛してると思ってたのに!」

     あの時と同じ、豹変していた。

     私は足下にあったパールを持ち、冬斗を殴り付けた。

     抵抗しながら、冬斗はナイフでパールを切ろうとしていた。

     だがしかし…。

    ザクッ!

     冬斗「ごはあぁッ!!」

     私は冬斗の胸元に、パールを串刺しにした。

     臓器を貫いていると思っていた。

     冬斗は口から大量の血を吐き、私の肩を掴んだ。

     冬斗「…お姉ちゃんがあの子を止めて…。…お願い……。」

     冬斗の体から塊が浮かび上がる。

     やがて粉々に崩れ、冬斗の姿は跡形もなく消え去ってしまった。

     麗奈「どうして冬斗が…。何で…。」

     私は冬斗の破片を手に取り、涙がぼろぼろと流れ始めた。

     諒も冬斗も、助ける事ができなかった。

    (ここから「エピローグ 最後の悪夢」終盤までカット)

     ヘリに乗ると、朝がやってきていた。

     『お姉ちゃん元気?』

     冬斗の可愛らしい声が、冬斗の携帯から微かに聞こえた。

     冬斗が私に送った、一通の動画。

     冬斗『大好きだよお姉ちゃん。早く会いたい。離れていても、お姉ちゃんを想ってるから。』

     冬斗『それじゃあね!』


     麗奈「…さよなら…。」

     私はそう呟くと、冬斗の携帯を投げ捨てた。


     どんなに暗い夜も、いつかは明ける。

     ようやく、夜明けが訪れた。

     気が遠くなるほど、長い夜だった。

     苦しめられたのは、私と冬斗だけじゃない。

     水島家もそう。

     あの化け物・エヴリンに、変えられてしまった。

     でもあいつはもういない。

     後の事は、彼らに任せればいい。

     冬斗の死から立ち直ろうとした私は、再び彼を失った。

     夜が明けても、光は見えない。


     全て、私の自業自得だった。

     あの時冬斗に血清を使っていれば、こんな事にはならなかった。

     冬斗、本当にごめんね…。

     お姉ちゃんは…、悪い人だったわ…。


     …帰還して仕事場に行っても、どこかへお出掛けしても…。
     
     …私は、毎日泣き続けていた…。

    【投稿者: リオン】

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    コメント一覧 

    1. 1.

      なかまくら

      うーん、バッドエンドですねぇ・・・。
      ただ、冬斗が、この水島家を巻き込んだ事件に関わっていたのだとしたら、
      本当は、諒のほうが被害者で、冬斗が選ばれなかったのは当然・・・
      そう考えると、冬斗が何で自分を選んでくれなかったんだ!!
      というのも、酷い話に思えてきてしまいますね。


    2. 2.

      リオン

      なかまくらさん》
      コメントありがとうございます♪
      バッドエンドの方は本当に悲しい結末となりました。生き残ったのは麗奈お姉ちゃんだけ…。大事な弟だった冬斗君も失い、麗奈お姉ちゃんの孤独な生活が始まってしまった所で、終わりました。