幼馴染み

  • 超短編 2,448文字
  • 日常

  • 著者: リオン
  •  僕は原谷 翔(はらや しょう)。

     ごく普通の17歳で、男子高校生だ。

     そんな僕には、一人の幼馴染みである女の子がいる。

     遠藤 舞依(えんどう まい)。

     彼女は元気でとりえのある女の子で、僕に親しくしてくれる優しい子なんだ。


     僕がそんな彼女…、舞依と出会ったのは、幼稚園の時。

     「おい、何か言ってみろよ!」

     「お前みたいな奴はここにいるだけで気持ち悪いんだよ!」

     翔「…。」

     僕は幼稚園の時からいじめられていた。

     助けなんて誰もいなかった。

     何もできず、親にも話さずでいたままだった。

     『やめてよ!』

     その時、女の子の声がしたんだ。

     舞依だった。

     舞依「その子から離れて!」

     「何だよ、邪魔すんじゃねえよ!」

     舞依「あなた達、その子をいつもいつもいじめて、何が楽しいの!?」

     舞依「その子に対する恨みがあるの!?」

     「何言ってんだよ。こいつはただ気持ち悪いだけで、お前には関係ないだろ!?」

     舞依「関係あるよ!例え手を出してでも!」

     舞依はそう言うと、僕をいじめた男の子を力強く押したんだ。

     「くそ、よくもやったな!」

     僕はただそこで見てるだけだった。


     舞依「きゃあっ!」

     「ほら見ろ、そんな生意気な事言ってるからこんな事になるんだ!」

     「殴ったお仕置きだ!」

     舞依「きゃ…!やめて…!」

     そこから、舞依も殴られていた。

     僕は怖くなり、立ちすくんでいただけだった。

     だがしかし…。

    ギュッ…!

     「何だよ翔!離せよ!」

     翔「だめ…!これ以上いじめないで…!」

     その時の僕は、涙をぼろぼろと流しながら、歯向かった。

     やめてほしい思いが吐き出しそうだった僕は、その男の子の腕をぐっと掴んだ。


     「ああもう、わかったよ!もう知らねえよ!」

     「チッ、行こうぜ!」

     男の子達はどこかに行ってしまった。

     舞依「うぅ…。」

     翔「…大丈夫…?」

     恐る恐る近付いた僕は、舞依に向けて手を差し伸べた。

     舞依「うん…、これくらい平気…痛…!」

     翔「あぁ、無理しないで…。」

     翔「…ごめん…、僕のせいだ…。」

     翔「僕がいじめられていたせいなんだ…!」

     僕は、生きちゃいけない人間だと、心から思い込んでしまっていた。

     本当なら、誰にでも仲良くできる子が欲しかったと思っていた。

     舞依「ううん、あなたは悪くないよ…。」

     舞依「私が手を出したせいだよ…。」

     翔「ぐすっ…、え…?」

     舞依「あなたも、勇気を出して私を守ってくれてたんだよね。」

     舞依「そうでなかったら、私は怪我だらけだったの。」

     舞依は身体に沢山の傷を負いながらそう言った。

     いくら女の子でも、ここまで傷付けるとは許せない。

     そこから、僕は守ってあげたい気持ちが高まってきたんだ。

     舞依「だから…、もう泣かないで。」

     舞依は僕をギュッと抱き締めた。

     悲しくて泣いていた僕の背中を…、優しく擦ってくれた。


     舞依「あ、ねえねえ!」

     翔「…ん?」

     別の日に、僕と舞依はすれ違った。

     その時の舞依は、本当にお転婆で可愛らしかった。

     舞依「この前、お名前言い忘れてたよね?私、遠藤 舞依って言うの!あなたは?」

     翔「僕は…、原谷 翔。」

     舞依「翔君かぁ、かっこいいお名前だね!」

     舞依にそう言われて、僕は赤面した。

     ここから、舞依は僕に毎日話しかけるようになったんだ。

     お昼の時も、それ以外でも…、僕と舞依は仲良くなった。


     そして、卒園式…。

     幼稚園が恋しくて、僕は泣いていたんだったな…。

     その時も、舞依が僕の手をギュッと握り締めていたんだ。

     舞依と一緒にいると、安心できる子なんだと、僕はそればかり思ってしまっていた。

     昔から、僕は舞依にばかり頼っていて…、本当に馬鹿みたいだよね。


     舞依「翔ー!」

     翔「…ん?」

     これは、僕が小学4年生の時。

     背も高くなり、声変わりもした時期だ。

     舞依「ちょっといいかな?話したい事があって…。」

     翔「別にいいけど…、何?」

     舞依「ちょっとこっち来て!」

     舞依がそう言うと、僕の手を引いて行った。


     舞依「あのさ、私…。」

     体育館裏で、僕と舞依は向き合っていた。

     僕は突然、告白だと思っていた。

     舞依「これ、覚えてるかな…。」

     舞依が差し出したのは、僕の水色のハンカチだった。

     星のマークがついたハンカチ、それは僕が幼稚園の時に、舞依が怪我した時に使ったんだ。

     返してもらうのを忘れていたと思ってた。

     翔「ああ、あれか。」

     舞依「そうそう!幼稚園の時に返そうと思っていたけど、なかなか手に出せなくて…。」

     翔「ううん、舞依が返してくれて、寧ろ嬉しいよ。」

     僕は舞依との昔話で笑い合った。

     まるで、恋人同士のようだった。

     …幼馴染みな訳で、付き合ってはいないけど…。


     小学6年生の修学旅行でも、舞依と一緒の班だった。

     同じ部屋だったから、一緒に寝たりとかしたけど…。

     あ、別に変な意味で言ってる訳じゃないよ!?

     てか、まだ小学生だったし…。

     でもまあ、帰りのバスの中では、手を繋いで寝ていたけど…。

     でも、楽しかったよ。


     それから小学校を卒業しても、中学校に入学しても…、僕は舞依とずっと一緒だった。

     卒業した頃も、舞依は僕の背中を擦ってくれたんだ。

     舞依と一緒にいれて、本当に良かった。

     僕は、そんな彼女が大好きだ。

     幼馴染みとして…。


     高校でも、僕は舞依と同じ学校だった。

     1年生の時は違うクラスだったけど、その代わり、男の子の友達ができた。

     啓太(けいた)だ。

     啓太は自分から僕と友達になってきたんだ。

     舞依は舞依のクラスで、久玲亜(くれあ)と友達になった。

     学年も上がると、僕達は同じクラスになった。

     啓太も、久玲亜も…、もちろん舞依だって、最高の友達だ。

     こんな人達と出会えて、本当に良かった。


     舞依「翔~♪」

     翔「あ、舞依。」

     舞依「えへへ、来ちゃった♪」

     翔「それで、今日はどうしたの?」

     舞依「ああ、今週の土曜日、皆でボウリングしに遊びに行こうかと思って!」

     翔「いいね!賛成するよ!」

     舞依「おっけ!じゃあくーちゃん達も誘っておくね!楽しみだなぁ~♪」

     翔「ふふふ…。」

     舞依の可愛らしさに、僕は笑みを作った。

     昔から変わってないな。

     そんな僕は、舞依の一生の友達…、いや、幼馴染みだ。

     これからも大変な事もあるだろうけど、彼女と、他の仲間達と共に突き進んでいこう。

     僕は、そう思っていた。

    【投稿者: リオン】

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    コメント一覧 

    1. 1.

      なかまくら

      翔! 優柔不断! 男を見せろ!
      告白を待つようじゃ、取られちゃうぜ・・・。


    2. 2.

      ヒヒヒ

      将来、強力な恋のライバルとか出てきそうですね(笑


    3. 3.

      リオン

      ヒヒヒさん》
      コメントありがとうございます♪
      それはどうでしょうか…wもしかすると、舞依は舞依で翔君が好きなのかもしれませんねw


    4. 4.

      リオン

      なかまくらさん》
      コメントありがとうございます♪
      翔君、確かに優柔不断ですねw何も考えずに、がむしゃらにやってしまうのが、翔君の第一印象かもしれませんね…w