※ドウターズ2の続きです。
バスルームに着くと、親父は湯船に母さん頭を沈めさせていた。
諒「親父…!?やめろ!!」
脩司「心配するな。このままではまだ終わらんぞ。」
脩司「綺麗好きはいい事だ。俺がお前の母さんを綺麗にしてやるからな。」
そこから親父からも、異変を感じた。
脩司「あの子の望みだ。」
脩司「あの子への愛情をしっかり見せてやらないとな!」
脩司「俺達に愛情を見せろとあの子は言っている。」
諒「親父…!」
親父は自分の胸元を包丁で串刺し、さらに掻き切った。
俺と親父の胴に親父の血がこびりついた。
脩司「あの子をがっかりさせたくないだろ?それは良くない。」
諒「あの子って誰だよ!」
脩司「お前の妹のエヴリンだよ!」
そう、これはあの少女・エヴリンの仕業だった。
あいつのせいで、親父や母さんがおかしくなっていた。
脩司「ロープを取ってくるのに一体いつまでかかってる!お前にはお仕置きしてやらないとな!」
諒「親父…!どうしたんだよ…!!」
俺はこれはエヴリンのせいだとは知らなかった。
何もできず、一目散に逃げるだけだった。
脩司「この家にいる限り、俺の言う事には従ってもらうぞ!」
諒「早く逃げないと…!」
俺はすぐそこにあった部屋に入り、親父が入ってこないようにロープで固定した。
脩司「諒!さっさとここを開けろ!!」
諒「近付くんじゃねえ!」
隣の部屋にあったフォークを手にし、壁に釘で張り付いていた木板を剥がし、ベランダに出た。
愛梨の声『ちょっと何してんだし!』
愛梨の声『ああ!くそ!やめろー!』
愛梨の声が聞こえる。
俺は愛梨を助けようと向かうと、彼女はもう手遅れだった。
脩司「いいか、よく聞け。お前はあの子の姉になるんだ。」
愛梨「ああ、やめろー!離せー!」
バタンッ!
脩司の声『おいどうした愛梨、あの子の力を受け取ってやれ。』
愛梨は親父に連れていかれ、ドアは鍵を掛けられた。
諒「こんなのありえねえよ…!」
俺は勝手口から外に出て、トレーラーに入った。
トレーラーには、一人の少年が寝転がっていた。
この少年は、冬斗だ。
異変が起きた後の事で、麗奈がこの家に来た時、俺はこいつは麗奈の弟だと思っていた。
手には、D型被検体の頭を持っていた。
これは最初、冬斗が見つけた物らしい。
机には、手紙が書かれている。
『水島家の皆さんへ
助けてくれてありがとうございます。でも、僕の事はどうか忘れてください。
あの船で僕はある「大事な荷物」を運んでいました。もしその「荷物」と関わった事を知れれば、あなた達に迷惑がかかります。警察には通報せずに、僕とも出会わなかった事にしてください。
それと、大切な事…。
船のそばで「10歳くらいの黒髪の女の子」を見かけても近付かないでください。
話しかけられても速やかにその場を離れてください。ただし、絶対に彼女の機嫌を損ねないように。
もし今、あなたに不調を感じるなら、それはきっと最悪な結果を招きます。病院でも治せず、死ぬより恐ろしい事です。
でも、助かる方法はあります。「血清」を射てば…症…の進………』
手紙には文字が書き乱れていて、先は読めなかった。
黒髪の女の子…エヴリンの事だ。
「お兄~ちゃ~ん…。」
エヴリンの声が聞こえ、振り返ると…。
ガシッ
諒「!?」
エヴリンは笑いながら、俺の腕を掴んできた。
そして、目の前が真っ暗になった。
諒「!?…寝ちゃってたか…。」
朝のリビングで、俺は目が覚めた。
どうやら夢だったらしい。
脩司「お、ようやく起きたみたいだな。」
愛梨「まずいコーヒーの匂いで目覚ましなよ。」
脩司「…愛梨。」
携帯を弄っている愛梨が淫靡な言語を発すると、親父は愛梨を睨んだ。
紗由理「大丈夫?昨日の夜は嵐で皆大騒ぎだったからね…。」
諒「うん、平気。でもすごい変な夢見た気がするんだ。小さい女の子がいて…。」
脩司「朝御飯を食べ終わったら、愛梨を連れて嵐の被害がないか調べてくる。お前達も庭の周りを確認するんだ。」
紗由理「それはいい案ですね。前のハリケーン覚えてますか?最初は被害が少なくても、次に雨が降ったら大変な事になるんですから…。」
親父達の後ろに、エヴリンが現れる。
親父達は気付いていなかった。
エヴリン「よろしく。お兄ちゃん。」
こうして、俺の孤独な戦いが始まった。
完全に支配こそ免れたものの、エヴリンの呪縛は次第に体を蝕んでいく。
豹変した家族に追われつつ、冬斗の書き残した「血清」を当て所なく探し求める日々。
やがて彼の前に麗奈が現れ、「血清」のもとへ導かれるのはまだ遥か先の事であった。
~ドウターズ end~
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