エピローグ 最後の悪夢

  • 超短編 2,690文字
  • シリーズ

  • 著者: リオン
  • ~前回までのあらすじ~
     冬斗に塊を剥がされ、意識が戻った麗奈。姉を脱出させた冬斗は、エヴリンの体組織を麗奈に渡し、扉を閉めた。一方麗奈は、冬斗の代わりにエヴリンを追跡し、殺すという目的を果たしに向かった。最後の悪夢が今、始まる…。


     [送信ログ:2015.1/16 (金) am 00:42]
     あんたらのおかげで正気に戻って一週間。支配されてないフリってまだバレてないみたい。おっかない生物兵器も、所詮ガキってワケ?
     親父や母さんは完全にあいつの言いなりだよ。あれが家族とか、あんたらどんな教育してきたワケ?

     [送信ログ:2015.11/4 am 02:10]
     エヴリンのおきにの冬斗って少年は相変わらず不安定。急に暴れ出したりするから、仕方なく檻に閉じ込めてる。
     エヴリンの奴、しょっちゅうボロ家に会いに行ってるらしい。お兄ちゃんが恋しいって事かな。

     [送信ログ:2016.4/1 am 01:10]
     エヴリンの家族集めがエスカレートしてるけどさ、冬斗の言うこと聞かないからイラついてるだろうけど、後始末する身にもなってほしいよ。

     そういや最近、エヴリンの様子がおかしい。顔色悪いし眼も落ち窪んで肌もガサガサ。これさ、細胞劣化が始まったんじゃない?


     これは多分、愛梨の日記だ。

     愛梨が見てきた出来事が、ここに書いてある。

     エヴリンに対しての出来事も…。


     私は冬斗から受け取られたエヴリンの体組織をアタッシュケースに入れ、E-ネクロトキシンという注射らしきものを取った。

     これでエヴリンを止められる。


     しばらく廃鉱が続く中、奥に木で塞がれた通り道があった。

     力を入れて押してみる。

     麗奈「うぐぅっ…!」

     すると、木はカラカラと倒れ込んだ。

     その先には、見覚えのある場所だった。


     冬斗『間違いない…。』

     少し進むと、私の瞳の先に冬斗が映り込んだ。

     冬斗『…!…ドアがない…!?なくなってる…!なくなってるよ!!』

     これは、最初にここで冬斗と会った出来事…。

     ここで冬斗は迷い続けていたんだ。


     地下を抜けると、廊下は白い霧が包まれたかのように、見えにくくなっている。

     麗奈『うわっ…!』

     冬斗『僕に構うなッ!!』

    バギギィッ!!

     私が凶暴化した冬斗に突き飛ばされた場所。

     今でも覚えている。

     エヴリンの声『全部お前のせいなんだ。』

     麗奈「これは幻覚…?」

     エヴリンの声が聞こえ、奥に行ってみる事にした。


     バッ

     麗奈「…!」

     冬斗『お姉ちゃん、安心して。大丈夫、僕だよ。』

     冬斗『傷つけるつもりはなかったんでしょ…?』

     エヴリン「そいつを殺して。お兄ちゃん。」

    ブンッ!

    バタンッ!

     冬斗『よくもやりやがったな!このクソ野郎が!!』

     冬斗『お前も味わいやがれ!』

     そうだ。この時の冬斗も、エヴリンに操られていたんだ。

     エヴリン「こいつお姉ちゃんになりたくないって。それじゃあ、殺すしかないね。」

     エヴリン「じゃあ次はお兄ちゃんがお前を殺す番だよ。」


     エヴリン「お前も家族にしてやる。そしたら少しはお行儀よくなるよね?」

     私は、E-ネクロトキシンをエヴリンに見せた。

     麗奈「…私は本気よ。」

     エヴリン「…!やめろ!私に近付くな!」

     エヴリンは怯え、去ってしまった。


     屋根裏に着くとエヴリンがいた。

     エヴリン「近付くんじゃない!お前にわかるもんか!」

     エヴリンから、思いもよらない風が吹き出した。

     私は抵抗しながら、エヴリンに近寄る。

     エヴリン「いや!やめて!もうそれ以上近付くな!」

     エヴリンは私に向かって否定してくるが、私はそれでも近寄った。

     エヴリン「やめろ!やめろ!やめろ!」

     そして、エヴリンの肩を掴んだ。

     エヴリン「嫌だ…!嫌だ!嫌だ!嫌だ!!」

    ザクッ!

     エヴリン「キャアァーーーッ!!」

     E-ネクロトキシンをエヴリンに打つと、耳をつんざくような叫び声が響き渡った。


     麗奈「…!あなたは…。」

     私の前に現れたのは、車椅子に座っていたお婆さんだった。

     エヴリンの正体は、このお婆さんだったのだ。

     エヴリン「どうして皆私を嫌うの…?」

     エヴリンは黒く染まった涙を流しながら、そう言った。

     麗奈「終わりよ。エヴリン。」

     エヴリン「ヴア″ァ″ァ″ァ″ァ″ア″ッ!!」

     エヴリン「苦しい!苦シイ!苦シイ…!!」

     エヴリンは泥状に溶け…。

     麗奈「…!?」

     辺りは穢れ始め、目の前には巨大な顔が映り込まれた。

    ガラガラガラ…!

     麗奈「…!?きゃあぁぁぁぁあッ!!」

     足下が崩れ、落ちてしまった。


     麗奈「うぅ…。」

     目を覚ますと、私は屋敷の外にいた。

     そして、巨大化しているエヴリンは、屋敷の屋根を突き破って出てきた。

    ザシュッ!

     麗奈「うあぁぁぁあッ!!」

     私は左足を串刺しにされ、そのうえ地上から離されてしまった。

     もう撃ち抜くしかない…!

     ショットガンやマシンガンなど、私は抵抗しながら撃ち続けた。

     エヴリン「ヴア″ァ″ァ″ァ″ァ″ア″ッ!!」

     麗奈「きゃあぁぁぁぁあッ!!」

     私はエヴリンが怯んだと同時に、振り落とされた。

     強く地面に倒れ込んだため、身体中に物凄い痛みが走った。

     私は奥を見てみると、マグナムらしき武器が落ちているのを見た。

     通信『それを使え!』

     私はその武器に近付く…!


     麗奈「さあ、これで終わりよ!」

    バァンッ!バァンッ!バァンッ!

     私はエヴリンの顔に何発も撃ち続けた。

     エヴリン「ヴア″ァ″ァ″ァ″ァ″ア″ッ!!」

     耳障りな金属音が響き渡る中、狙い続ける。

     エヴリン「ア″ァ″ァ″ァ″ア″…!」

    ガラガラガラ…

     エヴリンは地面に倒れ込み、粉々に崩れ落ちた。

     麗奈「はぁ…、はぁ…。」

     私は意識が朦朧としていた。

     これで、助かったのね…。


     ヘリの音が聞こえる。

     誰かが助けに来てくれたんだ。

     一人は、私に近付く。

     ヘルメットを外した人物は…。


     「慎太郎だ。無事で良かった。」

     私の従兄弟・慎太郎兄だった。

     慎太郎兄が差し伸べた手を、私は掴んだ。

     麗奈「…随分遅かったじゃない。」


     ヘリに乗ると、朝がやってきていた。

     これで、全てが終わった。


     冬斗「…お姉ちゃん…?」

     麗奈「…冬斗。」

     私のそばに、傷だらけで横になっていた冬斗がいた。

     麗奈「助かったのよ。お姉ちゃん達。」

     冬斗「…!本当に…?」

     冬斗は笑顔を作った。

     冬斗のこんな可愛らしい笑顔を見れたのは、久しぶりだった。

     私は、冬斗と手を繋いだ。

     冬斗の温かい手と心が、ここでやっと伝わった。


     どんなに暗い夜も、いつかは明ける。

     ようやく、夜明けが訪れた。

     気が遠くなるほど、長い夜だった。

     苦しめられたのは、私と冬斗だけじゃない。

     水島家もそう。

     あの化け物・エヴリンに、変えられてしまった。

     でもあいつはもういない。

     後の事は、彼らに任せればいい。

     私は冬斗を失ったと思ってた。

     でも彼は戻り、全てを乗り越え、歩み出そうとしている。

     ここから新しい日が始まる。

    ~バイオハザード7 end~

    【投稿者: リオン】

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    コメント一覧 

    1. 1.

      なかまくら

      お疲れ様でした。水島家とそれを囲むMAPで、思う存分活躍する麗奈を観られて楽しかったです。
      最後にぞっとしたのは、愛梨が、操られてなくて正気だったと言うことですww
      それとも、どこかで再び操られてしまったのかな?
      なんて思いました。正気だったとしたら、愛梨をそのまま野放しにしておくのは危険だなぁ・・・。


    2. 2.

      リオン

      なかまくらさん》
      最後まで読んでくださりありがとうございました♪
      第一の問題は愛梨はどうなったのか、ですね。あの時から逃亡し、行方不明のままで物語が終わってしまいました。
      しかし、麗奈お姉ちゃんと冬斗君、無事に帰れる事ができて良かったです。次はどんな物語を書こうか考えてます。もし良かったら、その物語にも読んでいただければと思っています♪