みっつの涙

  • 超短編 320文字
  • 同タイトル

  • 著者: 1: 鉄工所
  • 香りたつ風が

    街かどを曲がる

    西洋カボチャの色合いで

    小さい花が

    秋を深くする。

    *

    ふと目が覚めた

    白く滅菌なICU(集中治療室)

    ベッドサイドモニターの音

    腕や

    お腹に
    その他


    赤紫の皮膚の

    身体じゅうから繋がる管(ホース)

    流量を調整するデジタルの機器類


    点滴の雫が複数落ちる

    ポトリ ポタポタ

    ひとつ
    ふたつ
    みっつ

    悲しみの泪か

    それとも?

    努力の汗か

    なぜだろう

    不思議と後者にしか見えなかった

    だって…あまりにも点滴が賑やかだ

    廊下の向こう 差し込む日光に雫が輝き

    涙と言うか

    希望の光にしか見えなかった。

    モニターのバイタルサインに

    少し不規則な波形

    とは言え不安はまだ元気な証拠

    重症から目覚めるとそれを考える術もない

    即ち真の底辺には不安はないとAndroidは実感した。


    金木犀@鉄工所

    【投稿者: 1: 鉄工所】

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    コメント一覧 

    1. 1.

      なかまくら

      何に見立てるか。
      涙とは悲しいイメージがありますね。言葉の持つイメージを上手に掬い、そしてひっくり返して希望に昇華させている。
      温かで控えめなのに強く伝わって来る鉄工所さんの思いを感じられたように思います。


    2. 2.

      鉄工所

      たとえ死にゆくとしても
      水蒸気になり水になり
      大地の循環となる旅に出た。

      終わりからの始まりは
      ごく自然な流れなのかな?
      とも思う事も増えました。

      魂の保存の第一法則として
      言霊が残れば、ありがとうと思えてきます〜(´ー`*)