~前回までのあらすじ~
愛梨の処刑パーティー会場から脱出した麗奈。モニターに映っていたのは、弟の冬斗ともう一人の青年。彼は一体誰なのか。そして、再び恐怖が始まる…。
急ぎ足で桟橋の向こうへと向かった。
麗奈「冬斗…!」
ようやく、冬斗と会えた。
冬斗の隣にいた一人の青年は…。
麗奈「諒なの…?諒、私は…。」
諒「…後にしてくれ…。今は時間がない…。材料は両方持ってきたのか…?」
やはり諒だった。
紫色の瞳が被りそうな黒髪と、凛とした顔つき、白の半袖パーカーや薄い黒のジーンズを身に付けている。
麗奈「ここにあるわ。これで作れるの?」
諒「急いで作らないとまずいな…。きっと親父と愛梨は近くにいる。」
私は諒の手首に縛ってあった縄を切り離した。
そして、血清の材料を諒に見せる。
諒「オッケー。二人分あるな。」
そして私は、冬斗の手首にも縛ってあった縄も切り離す。
麗奈「…血清を作った後はどうするの?」
諒「外に停めてあるボートで沼を渡るんだ。」
諒「血清を打たないと、俺達は出られない。」
私は血清を二つ取ろうとすると…。
諒「おい、一つは俺のだぞ。」
諒がそう言った。
すると、微かに物音が聞こえ、後ろを振り向いてみると…。
ドガシャアァッ!
麗奈「うあ…!?」
脩司『諒…!何ヲシテイル?家ヘ戻ッテロ。オ前ハ後デユックリ話ヲシテヤルカラナァ…!』
壁を突き破ってきたのは、脩司だった。
しかも姿が変わり、巨大化していた。
脩司『オ前ハ…!俺カラ息子ヲ奪イヤガッテ…!』
脩司『隠レテ…!何ヲ企ンデイル…!?俺ノ家族トオォ…!』
紗由理と同様に、脩司も怪物のような声をしていた。
麗奈「ちょっとしつこいわよ、脩司!」
それに彼は一体どうやって復活したの?
もう訳がわからなかった。
脩司『オ前ハココニ来ルベキジャナカッタンダヨ…!!』
脩司『オ前ハ大量ニ血ヲ吐キ散ラシテ死ヌンダヨ…!ソシテ冬斗モ死ヌンダアァ…!!』
脩司『トットトクタバリナアァッ!!』
もうやけくそだった。
私は脩司の言葉に気にせず、弱点である無数の目を撃ち抜いた。
長い戦いが続き、私は目を撃ち抜く事に専念する。
バァンッ!
脩司『ヴオ″ォ″ォ″ォ″ォ″ォ″オ″ッ!!』
ズオォーーーンッ…
目を狙い続けていたため、脩司はようやく倒れた。
麗奈「流石に…、もう終わりでしょ…。」
諒の声『麗奈、こっちだ。』
脩司を倒すと、諒の声が聞こえた。
振り向くと、諒が扉を開けて待っててくれていた。
私は立ち上がろうとした途端…!
脩司『俺ヲ置イテイクツモリカアァッ!?』
ガシッ
麗奈「うあッ!」
脩司に捕まれた。
諒「そいつに血清を使え!」
麗奈「あなた…、こいつを助ける気…!?」
諒「とっくに死んでる!それで完全に殺せるから!!」
私は諒の言う通りに、脩司に血清を使う…!
ザクッ!
脩司『ヴオォォォォォオッ!!ヨクモヤッテクレタナァッ!!許サンゾオォォォォォォォォォオッ…!!』
脩司は血清を打たれ、白く固まり動かなくなった。
諒「…大丈夫か?」
麗奈「…ええ。」
諒「行こう。冬斗が待ってる。」
諒がそう言うと、さっさと行ってしまった。
血清が一つだけ…。一つ犠牲にしてしまった。
しかし、犠牲にした血清は、脩司を止めるためだった。
あそこで血清を使っていなかったら、私は死んでいた。
少し先に進むと、冬斗と諒がいた。
二人とも無事だ。
麗奈「血清を使ったわ。あと一つしかない…。」
冬斗「残ったのは一つだけ…?一人分しかないなんて…。」
諒「…これからどうするんだよ…。」
本当は二人に血清を打ちたかった。
これは、もうどちらかに使うしかない。
私は仕方なく…。
冬斗「うっ…。」
諒「…!」
冬斗を選んだ。
冬斗を助けるためにここに来たのだから。
冬斗は大切な私の弟だから。
諒「…いいんだ。逃げるなんて考えがバカだったよ。」
冬斗「でも、諒お兄ちゃん…」
諒「もういい、二人さっさと行けよ!」
諒は、私が自分に血清を使わなかった事に、酷く悲しんでいた。
冬斗「一緒に行こうよ。誰か治療できる人がいるはず…!」
諒「ここが俺の家だ。ここから離れられないんだよ…。」
もう行くしかない。
私はやむを得ず、ボートにエンジンをかける。
麗奈「助けを呼ぶから。」
諒「そんなのいらねえ。誰も助けなんか来ないくせに!!」
諒は最後には、涙を流してしまった。
罪悪感しかなかった。
諒、ごめんなさい…。
本当はあなたも助けたかったけど…、私が大切にしたいのは、弟だから…。
弟を愛しているから…。
弟を放っておけないから…。
…諒…、さよなら…。
冬斗「…お姉ちゃん…、ありがとう…。」
麗奈「…他に誰を選ぶって言うの?」
冬斗「…お姉ちゃん…。」
私はようやく、冬斗と巡り会う事ができた。
今は何の変異もなく、正常のままだ。
麗奈「…冬斗、辛いのはわかるわ。でも話して。」
麗奈「あなたが関係しているんじゃないの?」
冬斗「…。」
何を訊いても、冬斗は目を逸らして黙ったままだった。
麗奈「大丈夫、怒らないから。」
冬斗「お姉ちゃん…、本当に何も覚えてないんだ…。」
麗奈「…お願い。」
冬斗「…。」
冬斗は記憶を失ったままだった。
どうにかして思い出させないと…。
少し進むと、何か見えてきた。
麗奈「あれは船…?何でこんな所に…?」
冬斗「…?」
沈下しているボロボロの船を見つけた。
ガタンッ!
冬斗「うわ…!」
麗奈「…!大丈夫…!?今のは何…!?」
突然、ボートが揺れ出した。
そして…。
ザパアァッ!!
沼から何かが出てきた。
麗奈「何よこれ!ちょっと、どうなってるの!?うあぁッ…!」
何が起きてるのかわからず、衝撃に巻き込まれ、私と冬斗は流されてしまった。
あれは何だったのか。
私の意識は、ここで途切れてしまった…。
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