愛は可愛いものが好きだった。
テディベアシリーズのストラップを見つけては集めてたし、一緒にお出かけしては可愛いものを見つけて笑顔で教えてくれた。
愛はお喋りだった。
いつも私に話しかけてきて、色んなことを教えてくれた。このブランドの服は素敵。この女優さんはとっても綺麗。
お昼の時間にやってきては、笑顔で話してくれた。他愛もない会話だが、話し上手の彼女の話はいくら聞いても退屈しなかった。
愛は人といるのが好きだった。
ここのお店、多分気に入るから一緒に行こうとさそっては、私とお店を巡り歩いた。私から誘うと、二つ返事でどんな所でもついてきてくれた。
だけど、ある日、図書館に行きたいと言ったら断られた。静かな雰囲気が苦手なんだそうだ。彼女の性格からしたら確かにそうだろう。是非二人で行きたかったが、仕方なく、私はひとりで図書館へ行った。
翌日。私は一冊の本を借りてきた。
愛は聞く。何の本?
私は題名を読んだ。『心を映す本』。
おすすめ。気になったら読んでみて。
その次の日。私が本を返しに行こうとすると、愛にその本を貸してほしいと言われた。
私は嬉しくなって、司書さんに二度借りさせてもらった。
また次の日。
愛は死んだ。交通事故だった。
前を見ないで歩いていて赤信号を渡ってしまったそうだ。彼女の手には一冊の本が落ちていたと言う。
私が貸した本だった。
警察の人が来て、本を見せられた。
一番彼女と近しい存在だったので話を聞きに来たらしい。本には知らない
しおりが挟まっていた。
愛のものだった。彼女のものとは思えないくらい質素で渋いしおりだった。
警察の人か教えてくれたのだが、
近くにいた人の話によると、彼女が
しおりを挟んだ瞬間に事故が起こってしまった、とのことだった。
その時、彼女は泣いていたのでよく覚えていたらしい。
私は気づいた。
つまり、このしおりは彼女の人生の最期に読んだ場所を示している。
彼女が死ぬ直前に過ごした時を示しているのだ。
単純に気になった。本を好きではなかった彼女がそこまでして読み進めたかったもの。涙するほど、心に残ったページを。
貸したのは名言集だった。
そこには一言、「自分らしくありなさい」
と、書いてあった。
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