恐怖

  • 超短編 2,176文字
  • シリーズ

  • 著者: リオン
  •  激しい大雨が降り続く中、翔は全力で走った。

     翔「はぁ…!はぁ…!」

     翔(どうしてこうなったんだよ…!町中ゾンビだらけじゃないか…!)

     C-ウイルスのせいか、町の人々はゾンビと化していく。

     まさに、「地獄」だった。

     「翔!?」

     翔の後ろから、声が聞こえた。

     翔「…!?舞依!」

     幼馴染みの舞依だ。

     舞依は翔と同じく、一人で避難していた。

     舞依「無事だったのね…!一人なの!?」

     翔「うん、家族は外出中なんだ。一人で避難所に行くしかないと思って…。」

     舞依「私もよ。それより早く!」

     翔「あ、ちょっと…!」

     舞依は翔の手を引いて走り出した。

     翔は少々躓きながら、舞依に着いて行く。


     舞依「もぅ…、遠すぎるわよ…!」

     翔「舞依…!止まって…!」

     舞依「何言ってるのよ!こんな状況で立ち止まる訳にいかないでしょ!?」

     翔「そうだけど…!」

     舞依「じゃあ早く着いて来なさい!」

     休んでいる暇なんてない。

     今は緊急事態に陥っているのだ。


     そして、避難所に着いた。

     翔・舞依「はぁ…、はぁ…。」

     翔「やっと着いた…。」

     舞依「他の皆は無事かしら…。くーちゃんはもう避難所にいるけど…。」

     翔「啓太は…?」

     翔は啓太がいない事に気付く。

     思えば、久玲亜もいない。

     舞依「一緒じゃないみたい。啓太からそのうち来るって、くーちゃんが伝言をもらったらしいわ。」

     翔「そっか。無事だといいんだけど…。」

     久玲亜は啓太から伝言をもらったらしい。

     翔は大丈夫と思い、胸を撫で下ろした。


     久玲亜「あ、翔!まいまい!」

     部屋に入ると、久玲亜がいた。

     翔「久玲亜!無事で良かった…。」

     久玲亜「啓太は無事なの…?」

     翔「僕もわからない。でも、伝言はもらってるんでしょ?」

     久玲亜「そうだけど、やっぱり啓太が心配…。」

     彼氏である啓太が避難所に来ていない事に、とてつもなく心配が溢れ出している久玲亜。

     啓太は久玲亜にとって、それほど大切な人だ。

     舞依「こんな状況じゃ連絡も取れそうにないわね…。一度体勢を整えましょ。」

     舞依がそう言うと、翔はその場で座り込んだ。


     しばらくすると、町の人が避難所に集まってきた。

     翔「他の人達も逃げてきたんだ。」

     どうやら翔達以外でも、バイオハザードを見かけた人は少なくもない。

     被害が起きると、誰もが避難するに決まってる。

     舞依「ダメだわ、ちょっと通話したけど、繋がらない…。」

     久玲亜「啓太…。」

     久玲亜「早く…来て…!」

     舞依は啓太に通話するが、なかなか出てこない。

     久玲亜は泣き出しそうだ。

     舞依「くーちゃん、泣かないで。啓太はきっと来る。」

     久玲亜「本当…?」

     翔「ああいう奴だから、心配ないよ。」

     久玲亜「…。」

     久玲亜「やっぱり…怖いよ…。」

     舞依「くーちゃん…。」

     翔「…。」

     ついには、久玲亜は泣き出してしまった。

     久玲亜の啜り泣く声を聞く翔と舞依は、もうどうしようもできなかった。


     男性「おい、何か来たぞ…!」

     避難所にいた中年の男性が、ドアに向かって人差し指を指した。

    バンッ!

     ゾンビ「ヴガアァ…!」

     翔・舞依・久玲亜「!?」

     部屋に入ってきたのは、一人のゾンビだった。

     女性「きゃあぁ!」

     老人「何じゃ、あやつは…!」

     翔「マジかよ、これ…!?」

     思えば、誰もゾンビを殺す武器を持っていない。

     近付いたら、あっという間に掴まれ、喰われてしまう。

     ゾンビ「ヴガアァッ!」

     久玲亜「ひぃ…!」

     久玲亜は怖くなり、立ち上がる事すらできなかった。


    バンッ!

     ゾンビ「ヴガアァ…!?」

     その時、銃声が鳴り響いた。

    バンッ!バンッ!

     ゾンビ「ヴガアァ…」

    バタッ…

     ゾンビは頭を後ろから何発も撃たれ、血を流して倒れた。

     翔「今のは…!?」

     そこにいたのは…。


     啓太「はぁ…、はぁ…。」

     久玲亜「啓太!」

     そう、拳銃を構えていた啓太だった。

     どうやら啓太は、先程部屋に入ろうとした瞬間に、ゾンビが人々を襲おうとした所を見かけたらしい。

     啓太「まさかこんな事になっていたとはな…。拳銃を持ってて良かった。」

     久玲亜「啓太あぁッ!!」

     啓太「おわっ!?」

     久玲亜は啓太が来た所で、涙を流しながら抱きついた。

     久玲亜「啓太あぁ…!怖かったよぉ…!」

     啓太「久玲亜…。」

     啓太は泣き叫ぶ久玲亜の背中を擦った。

     舞依「あんたがいつまで経っても来ないから、くーちゃん心配していたわよ。」

     啓太「そうか…、久玲亜ごめんな、遅くなってしまって…。」

     翔「ところで啓太、その拳銃は…?」

     翔は啓太の右手に拳銃を持っていた事に目がついた。

     啓太「ああ、これか?さっき道中で拾ったんだ。」

     啓太「んでもって、翔達の分の拳銃はないかと、あちこち探した。」

     啓太がすぐに避難所に向かえなかった理由は、皆の分の拳銃を探していたためだった。

     翔「だから遅くなってしまったのか…。」

     舞依「それで、結局見つかったの?」

     啓太「二個見つけた。一個はサツの人に借りてもらった。」

     啓太「俺だけではキリがないから、やるよ。」

     見つかったのは二個だけだったが、啓太はわざわざ交番へ向かい、警察から拳銃を一個借りたらしい。

     翔「啓太…、ありがとう。」

     舞依「銃なんて本当は使いたくなかった事ないけど…、ないよりはマシね。」

     啓太「弾も沢山貰ってきた。四人に分けて渡しとく。」

     啓太は拳銃の弾を皆に渡した。


     翔「別の武器を取ったら、保留する感じだね。」

     啓太「そうだな、俺は久玲亜と行動する。翔は舞依と行動してくれ。」

     翔「了解。」

     啓太「よし、じゃあ散開だ!」

     少年達は、避難所を出た。

     少年達の更なる恐怖が今、始まる。

    【投稿者: リオン】

    一覧に戻る

    コメント一覧 

    1. 1.

      なかまくら

      >翔「舞依…!止まって…!」
      のフラグが一瞬でへし折られたのには笑ってしまいました。ただのへたれじゃない所を見せてくれますか! 翔!
      今の日本でも拳銃があるところにはあるのかなぁ・・・なんて思いました。
      避難所を出るきっかけはもうちょっと詳しくあっても良かったかもです。