完璧な彼女~Perfect Woman~

  • 超短編 1,342文字
  • 日常

  • 著者: 一禅
  • つい先日、私は同棲していた彼女に別れを告げられた。私はあまりにショックであったため、何もやる気が起きなく、会社にもいく気にならなかった。しばらくの間、フラれた理由について考えてみたが、なぜフラれたのかが全く分からなかった。

    突然一本の電話がかかってきた。どうやらセールスのようらしい。電話を切ろうとしたとき、声の相手から驚きの一言があった。
    「あなたさまは最近失恋を経験なさりましたか?」
    私はなぜそれを知っているのか驚いた。まだ誰にも話していないはずだが・・・。しかし、よく考えてみれば失恋なんて誰にでもあるようなことなのだから偶然に違いないと思い直した。
    「はい。しましたが何か?」
    と少し間を開けて答えた。
    「左様でございますか。それならば丁度よい機会です。我が社の開発した最新のロボットをお使いになってはいかがですか。今なら無料で半年間ご利用になられますよ。」
    「ロボットって何のロボットですか?」
    私は尋ねた。
    「実は同棲ロボットと言って、恋愛シュミレーターのようなものです。このロボットを半年間使うことで心の傷を癒すというものです。内容は全てプログラムされているので、ご安心ください。きっといい生活を送れることでしょう。」
    私は無料ならと了解した。

    後日、そのロボットが届いた。大きな段ボール箱を開けると、なんとも言えないような優美で華麗な女性のロボットが包装紙のなかに横たわっていた。
    早速バッテリーをいれてみると、綺麗な瞳がこちらを覗いた。
    「こんにちは。私はあなたの心の傷を癒すために設計されたロボットです。よろしくねっ。」
    ロボットとは思えないような流暢な喋りで、私は関心した。

    このロボットの何が凄いかというと、家事、掃除、洗濯など全てをやってくれ、なんにせよ会話が非常に弾む。毎日が天国の様に楽しい。その楽しい時間もつかの間、あっという間に半年が経過した。回収の人が来て、ロボットを持っていった。私はすっかり心の傷は癒え、仕事にも精力的に取り組んだ。少し寂しさもあったが、新しい彼女もでき同棲することになった。

    しかし、その彼女と同棲を始めると、どうやらロボットの方が気が利くし、楽しい。ロボットが完璧すぎたのか、ロボットと比べると今の彼女には満足することが出来なかった。

    結局、私は別れを自ら告げもう一度あのロボットに会いたくなった。すると偶然か、その会社から電話が掛かってきた。私は今すぐ長期契約をしたいと申し出た。もう私はあのロボットなしでは生きていけないようになっていた。
    「かしこまりました。期間の延長でよろしいですね。毎度ありがとうございます。価格は月一万円と低価格なのでご安心ください。」
    私はそんなに安いとは思わなかったが、安いに越したことはないと思い契約した。
    それにしても、なぜこんなに安いのか気になったので聞いてみると相手はこう答えた。

    「実はですね、私どもの会社は人口爆発や自然環境破壊を防ぐため人工抑制を目的としたプロジェクトを行っており、政府からその報酬としてお金をいただいてるのです。あなた様のはじめに付き合われていた彼女様も我が社のロボットを購入なさったんですよ。みなさん大変満足しています。そろってみなさんこう言うんです。『もう人間とは住みたくない』と・・・・・・。」

    【投稿者: 一禅】

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    コメント一覧 

    1. 1.

      しんかず

      凄く分かりやすく、読んでいて気持ちがいい作品ですね


    2. 2.

      けにお21

      これは良作!


    3. 3.

      矢凪

      星新一作品と似た香りはするものの、それより噛み砕きが丁寧で伝わりやすいですね!ひとつ小さな矛盾?を挙げるとすれば、パーフェクト恋人のために前恋人との破局が訪れたとする際、同棲設定がやや謎かもしれません。週末同棲などにあと一歩踏み込んでも良いのかと存じます。