おてて
__ぱち ぱち ぱち
ゆっくりと気ままに手を叩き、彼女は言った。
「手のしわとしわを合わせて"幸せ"なら……」
__ぱちん
一際大きな音が辺りに響いた。
僕は彼女のその手を見つめながら帰路に就いた。
「人は"幸せ"を"願う"よね」
彼女はまだ、そんなことを言っていた。
「幸せを願うのは当たり前じゃないか」
僕は横目で楽しそうに見てくる彼女にぶっきらぼうに返したのを微かに覚えている。
「じゃあさー」
今度は僕の手を両手で握って、指を絡めながら、「私達二人が手を合わせたら二人で幸せになれる?」と訊いてきた。
「…………」
ジリジリと、眩しい太陽が耳を焦がし始めていた。
「……なれるよ、というか、なるよ」
「本当に? じゃあじゃあ、これは?こうしたら、どうなるのかな」
彼女は自分の手の甲と僕の手の甲を合わせて可愛らしく首をかしげた。
「それは__」
続きは言えなかった。
通学路に突っ込んできた車に彼女は轢き潰されてしまったから。
何が起きたのか理解できなくて。
何が起きたのか理解したくなくて。
何も出来ないままでいたら、背中から女の高い笑い声が鼓膜を震わせたのだ。
「あっははッ、死んじゃった、死んじゃった、××だね」
そう、笑顔で言い放った彼女のその両手は、手の甲が合わせられて、傷だらけの指関節がぴったりと互いに寄り添い合っていた。
コメント一覧
手と手の皺を合わせて幸せって、昔お線香のCMかなんかで見たことあります。
手の甲だと、節と節なので不幸せになるのですか! 知らなかった。。
えっとどうやるのだろう?。。。右手、左手をえっと・・合掌は簡単だけど、手の甲と甲となれば難しいな・・・あっヤバイ!やって車に轢かれたら嫌なので、合わせるの止めておこう。
さて、本作は手の甲(節)を合わせたばっかりに即座にお亡くなりになられた悲劇。
最後、背中から「死んじゃった」などと野次を飛ばす女性も、両手の甲(節)がぴったりとくっついていたとのこと。
あれれ、本作内では手の甲が合わさると、不幸になるはずなのに、この女性に関しては不幸になるどころか、ぴんぴんしていて、被害者に対して笑顔で心無い言葉を発している。。。
片や、手の甲(節)を合わせたばっかりに即効車に轢かれて死んでいるのに。
と、そこが疑問でした。
が、もしかすると、背中の女性は「笑顔で心無い言葉を発する歪んだ性格が不幸」と言うこと?かなあ、と思いました。
>1
閲覧ありがとうございます!
今回は書いてない部分ですし、そこの所はご想像にお任せしますぞ。
手の甲くっつけるの、なかなか難しいですよね
…………。
でもまあ、お一つ。
彼女が生きているとは一文字も、……あら? 今、誰かに背中をおさ
女と彼女は別人ですかね?
それが違うと、物語の印象ががらりと変わりますね。
彼女は、純朴なのかはたまた、もう疲れてしまっていたのか。
急に死んじゃったのでびっくりでした。
女と彼女は別人でしょうか。
手を合わせると言う聞き慣れたフレーズに幸せを願うと言う言葉。しかもその後に彼女が轢かれるのが、かなりインパクトがありました。