フライドポテト

  • 超短編 811文字
  • 恋愛

  • 著者: mocha
  • 「だから違うって!」
    目の前で夏奈がニヤニヤしている。
    こうやって私がムキになればなるほど彼女は楽しそうに笑う。悪い顔だ。
    「好きなんだよ、栄子。だってさっきから優太の話ばっかりだもん。」
    夏奈は紅茶のグラスに口を付けながら言った。
    「もう付き合っちゃえばいいのに。」

    どうしていつもこうなんだろう。
    夏奈は何もわかってない。私が優太の話をするのはアイツがどれだけ馬鹿で、非常識で、最低な男かを説明するためなのに。
    今日だって、大好きな先輩の前でわざわざ話しかけてきて。お陰で私は先輩とおしゃべりできる貴重な時間を潰されたのだ。最低!本当にタイミングの悪い男!

    「あっ、そういえば今日、バスケ部の1年に告られたみたいだよ、優太。」
    夏奈がふと思い出したように言った。
    「アイツ意外とモテるもんね。早くしないと取られちゃうかもよ?栄子、後悔しない?」
    「別に関係ないし。どうぞお幸せに~って感じ。」
    そう言ってフライドポテトを口に放った。熱っ、と思い今度はコーラを一気に啜る。思ったより炭酸が強くて少し涙目になる。

    帰り道。夏奈の言葉が蘇る。
    「後悔しない?」

    優太、バスケ部の子と付き合うのかな。その子のこと、好きなのかな。
    もう話しかけてこなくなるかな。

    私のこと、好きじゃなくなっちゃうのかな。
    夏の日差しが目に染みる。セミが忙しなく鳴いている。

    …まだ、間に合うかなぁ

    「おーい。何ボーッとしてんの?」
    「へっ!?なんで!?なんで優太がいんの!?」
    「なんでって、俺も帰りこっちだし」

    顔が熱い。緊張して足が震える。
    なんか馬鹿みたいだ…優太なんかに。

    というか、なんで今いるわけ?

    あーもう、本当にタイミングの悪い男!

    「優太、あのさ」
    私はふう、と深く息を吐いた。

    風が吹いて、木々が揺らめく。青空には雲一つ見当たらない。緑の葉から零れ落ちる光がキラキラと二人の顔を照らしていた。


    夏奈がまた、笑うだろうか。

    馬鹿で、非常識で、最低な男。
    そんな男と、恋をしてしまった私の話を。

    【投稿者: mocha】

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    コメント一覧 

    1. 1.

      なかまくら

      恋の始まり、という感じが上手く描けていますね。
      >私のこと、好きじゃなくなっちゃうのかな。
      キープとはこういうことなのか・・・(ガクブル
      女の子ってこういうこと考えているのかなぁ。なんてリアリティを感じました(笑


    2. 2.

      mocha

      けにお21さん

      コメントありがとうございます!
      キラキラの青春!でもちょっとありがちな話になっちゃいました…笑

      栄子に向けての応援なのに、私まで嬉しいです、笑
      ありがとうございます!


    3. 3.

      mocha

      なかまくらさん

      コメントありがとうございます!
      キープ…そう考えると優太可哀想…笑

      女の子ならではの気持ちが表現したかったのでそう言ってもらえると嬉しいです!ありがとうございます!


    4. 4.

      けにお21

      キラキラ青春を感じました。

      照れ隠しで、嫌よと、と言うが、それは実は好きの裏返し。

      友達の夏奈は、優太の話ばかりする栄子の気持ちに気づいている。

      ライバルの出現に焦る主人公栄子。

      いよいよ、勇気を持っての告白ですね。

      ファイトー、栄子ー!


    5. 5.

      尾長

      夜中だというのに小腹がすいて、ああ丁度冷食があるやと思って、ポテト揚げてモシモシと食べてたのですが…
      あれ、この芋甘いなぁ……?


    6. 6.

      mocha

      尾長さん

      コメントありがとうございます!
      夜中に限ってお腹が空きますよね!
      甘い芋!と言えば…もう秋ですね…早くさつまいも食べたいです。笑