風が笑う

  • 超短編 568文字
  • 日常

  • 著者: 3: 茶屋
  • キヒヒと笑う風がいる。

    昨日は犬を殺した。その前は猫を殺した。

    だぁれも気づかない。

    笑う風は僕の中にいる。僕の中にいてキヒヒと笑う。

    僕が死ねと思ったら、風が胸から吹いてきて皆を殺してしまう。

    だから僕は誰にもわからない場所で必死にソイツを押さえているんだ。

    声に出せば笑う風が吹き出してしまう。

    学校とか、テストとか、宿題とか。そういうのを強制する全てを切り刻んで殺したい。

    でもダメなんだ。それはとても悲しいことなんだ。

    殺した犬には飼い主がいた。ボクに吠えてボクを噛んだ犬だけど死んで悲しむ人がいたんだ。

    あの野良猫だってもしかしたら誰かの支えになって大事な存在かもしれないんだ。

    ボクと違ってね。

    風はそんなボクを笑う。バカでアホウな奴だと笑う。

    誰かにいったらバカにされてしまうから、そうなったら風が吹くから。

    だから誰にも言わずひっそりとひきこもるのだ。

    でも辛いなぁ、我慢は苦手なんだ。

    そうだ、思いついた。

    僕がいなくなれば風はもう吹かない。我慢をしなくてもいい。やったぜ。

    風がヒヒヒと笑う、きっと何度目かの同じこと。

    風が僕を刻む、風が笑うキヒヒと笑う。

    都会のどこかで一人の少年が死んだ。それは社会が悪くて、大人が悪くて、いじめられていたらしい。

    それは全部間違い。

    優しい弱い子がいたというだけ。

    風は今日も吹く、誰かの優しさの中にキヒヒと笑って入り込む。

    【投稿者: 3: 茶屋】

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    コメント一覧 

    1. 1.

      鉄工所

      H5N1型が変異し
      パンデミングが起きるとこうなる事も…

      所謂、風邪 そう邪悪な風

      イジメにあった頃は、こうありたいと思っていました。

      そう、ごく普通ごく自然に


    2. 2.

      なかまくら

      風通りの良い生き方をしないとなぁと思いますね。
      優しい人は、誰かの悪口を言わないように気を遣って、勝手に疲れちゃいますね。
      そういう人でも幸せに生きていける場所があれば良いのに・・・。


    3. 3.

      けにお21

      笑う風、もとい殺人風ですね。

      この笑う風とは、誰しも持ち得る悪い心、殺意かも知れないですね。

      とした場合、殺意を抱くくらいなら、死んでしまった方が良い、と命を絶ったのかな?

      心優しきこの少年は、世知辛いこの世で生きて行くには少し優しすぎたのかも知れませんね。

      できれば、殺意など抱かず、心安らかに生きたいものです。
      ちなみに、僕は、少なくとも半年に一回は他人に殺意を抱いていますね〜
      それでも、ドス黒い自分の命を絶たないのは、一過性の風と知っていて、風が通り過ぎるのを気長に待てる大人だからかも。



    4. 4.

      茶屋

      >なかまくらさん
      感想ありがとうございます。
      生きていくだけで辛いことがあると思います。でも幸せになるためには自分で場所を作らないといけないのではと最近感じています。


      >けにおさん
      感想ありがとうございます。
      風は誰の心にも吹くと思います。
      大人になるってのはその風との付き合い方を知ることなのかもしれませんね。