コンビニの帰り道、女の子のペースに合わせ自転車を押す男の子を見て、そういうのいいなと思い微笑みつつ、
余りにもゆっくり歩くので、その二人組を追い抜いた。その際、「後ろ乗りたいっ///」「えっ...///」という会話が聞こえ、
さらに口元がゆるくなる。
数十秒後、「こわーい」といいつつも、楽しそうな彼女らに追い越された。幸せオーラが全開で、今度はイライラした。
睨んでしまっていたんだと思う。暗くてよく分からなかったが、自転車の後ろに乗っている彼女と目が合った気がした。
思わず目を逸らした。再び目を向けると、まだこちらを見ていた。やはり、あの女はこっちを見ている、そう確信した。
かわいそうなものを見るような目で見られている気がした。
なんだか、ビニール袋にあるたこわさを投げつけて、ベトベトにしてやろうと思った。
そこからの行動は早かった。広がっていく差を縮め、追いつくために思い切り走った。それに気づたのか彼女らは、
自転車を漕ぐスピードを上げていた。体力の限界が近い。諦めかけたが、「たこわさを投げてベトベトにする」という意思は
強かったので、しつこく追いかけた。偶然にも彼女らが進んでいる道は、自宅への帰路であった。
しばらくして、交差点を真っ直ぐ進んだところで、自転車は大きな音を立てて転倒した。長らく独り身でいた私に、
幸せそうな様子をみせつけるように振る舞ったので罰が当たったのだ。そう思った。心底嬉しく、笑い声が漏れてしまわないように、必死にこらえた。
二人組がこっちを見ている。怒っているようである。本気で怒っている空気が伝わった。
たこわさを投げていい空気ではなかった。逃げるように交差点を左に曲がり、急いで自宅へと帰った。
たこわさをつまみにして飲む酒は、いつもの何倍にも美味しく感じた。軽く酔っぱらい、あの二人組のことを考えた。
今頃なにをしているのかと想像したら、とても不快な気持ちになった。今度会ったときこそ、
たこわさを投げてベトベトにする、そう決意した。
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