風さらら

  • 超短編 661文字
  • 恋愛

  • 著者: 猫の耳
  • ちょっとした予感。お昼休み、南校舎三階、階段の踊り場で待っていれば会えるかもしれない。
    超特急でお弁当を食べ終わると席を蹴って、一気に階段を駆け上がる。
    フワッと両足を投げ出して、ペタンと床に座り込む。食べたばかりの胃袋がびっくりしている。
    高い窓から入り込む風が気持ち良い。スーッとミントの葉を噛んだような爽快感。顎から髪へと抜けていく。
    「スカートが汚れるよ」突然、上から声がした。振り向いて見上げると、階段の上から天ちゃんのニカっとした笑い。
    「あんまり綺麗な笑顔じゃない」私が言うと「何だよ空から降る最高の笑顔だろ」って更にゲラゲラと笑う。
    だからその笑い方!…まあいいけどさ。
    「待ってたの」「俺を?用事?」「ううん、予感」
    立ち上がり、スカートの裾をポンポン払う。あっまた風が抜けていく。気持ちいいね。
    背伸びして、二人並んで窓から身を乗り出して外をのぞく。
    「見て、お昼休みなのに校庭を走ってる」さらりと私の髪が風に流れて天ちゃんの頬に当たる。
    ちょっとドキドキとかしてない?あれ?言わないの?いい匂いだなあって。
    首を傾げて天ちゃんの顔を覗き込むと、眼をつぶったまま、まるで空を旅しているみたいな顔つき。
    「もしかして、今どっか飛んでる?」そう聞くと、薄目を開けて照れくさそうな横顔。あっこの表情好きかも。
    「よくわかったな。ここは南太平洋の上だよ。空も海も風も真っ蒼だ」
    「わあ、私も今から行く」
    目を閉じる。二人で蒼い海の上を飛ぶ。飛ぶ。風に乗り、空を駆け、どこまでだって行ける。きっと、ずうっと。

    あっ遠くで午後のチャイムが鳴ってる…

    【投稿者: 猫の耳】

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    コメント一覧 

    1. 1.

      けにお21

      恋人同士。
      真の恋人なら、二人でいれば無敵で、何処にでも行ける。羨ましい感覚です。


    2. 2.

      ヒヒヒ

      なんだか楽しそうですねぇ。
      二人そろって先生に怒られるんでしょうけど、それさえいい思い出になるんだろうな。


    3. 3.

      なかまくら

      「待ってたの」からの「ううん、予感」
      これ、めっちゃいいですね。言葉少ななやりとりが、風が吹く屋上に似合っていました。


    4. 4.

      猫の耳

      けにお21さん、ヒヒヒさん、なかまくらさん、ありがとうございました。校舎の窓から吹き抜ける風は、大きくて、さわやかで、すごく気持ち良かったです。もう遠い遠い記憶ですけれど。


    5. 5.

      鉄工所

      初めまして
      チョット涼風吹く季節
      体調はいかがでしょう

      風は緑を育てると言いますが
      この頃の風本当気持ち良かったですね。

      背伸びしてお臍は見えたの黙っておきますね。