音速のクワガタ 前編

  • 超短編 578文字
  • シリーズ

  • 著者: 3: 茶屋
  • 『音速のクワガタ』

    思わず買ってしまった。スーパーの片隅に賞味期限が迫った商品を置く場所があってそこについ買ってしまった。

    シラタキを買うつもりだったがパッケージのインパクトに負けてしまった。とりあえず包装を確認しよう。

    まず食品かどうかで考えたが、間違いなく食品で間違いないそうだ。「開封後は的確に対応してください」この一文のせいですべてがわからない。

    なんなら、清涼飲料水とか書いてあるのも意味不明だ。説明文を読むと開封前にフォーク、さすまた、バタフライナイフ、等を両手に持って構えてくださいとある。

    仕方がないので、手元にあったガスバーナーとハサミを持って構える。真空パックに閉じ込められたクワガタを食すべく「ここから開封ください」という吹きだしのついた切れ込みをハサミで開けようとすると

    尋常じゃなく痙攣し始めた。ブブブブブブブブブブブブブブブブブブとか言い始めた。少しずつ入っていく空気に反応したのか顎がかなり高速で開閉している。

    というかこれもう食べ物じゃないよね。なんでこんなになるまで気づかなかったんだ、きっと仕事に疲れて正常な判断ができなかったんだ仕方ない社会が悪い。

    なんて現実逃避をしている余裕はない。切れ込みは広がりクワガタは活発に運動を始めている。

    そしてガスバーナーを盾にハサミを槍として構えた私の前に完全に解き放たれたクワガタが浮かび上がった。

    【投稿者: 3: 茶屋】

    一覧に戻る

    コメント一覧 

    1. 1.

      けにお21

      出た、クワガタ!

      シラタキを買わず音速のクワガタに手を伸ばしたバッカリに・・

      アルアルですね〜w