夢老い人

  • 超短編 408文字
  • 同タイトル

  • 著者: 1: 9: けにお21
  • もちろん、結婚し、子供をもうけ、孫の面倒を見て、自分が築いた家族に看取られながら他界する。平凡だが暖かな生活に憧れない訳ではなかった。

    しかし、私は夢への障害になる邪念として、その暖かな憧れを振り払ってきた。夢に全精力を注ぎ、夢に私の人生を賭けたのだ。

    今、私は病床に伏し、私と言う幕を閉じようとしている。きっと誰にも看取られる訳ではなく、寂しい幕引きになるはずだ。

    夢破れ、家族もなく、何もない。

    「無駄に人生を送ったのか?」

    結果論だが、夢よりも、自分の幸せために生きたほうが良かったのかもしれない。私は生き方が下手だったのかも知れない。

    一生は一度きり、悔やんでも過去に戻りやり直すことは出来ない。

    しかし、私は思うのだ。所詮は一人の人間として産まれ、しばらく生きて、死ぬだけのこと。

    ただそれだけのことであり、大したことではない。騒ぐ程のものではない。

    翌朝、この老人は息を引き取った。

    その死に顔に一点の曇りもなかったと言う。



    【投稿者: 1: 9: けにお21】

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    コメント一覧 

    1. 1.

      ヒヒヒ

      価値観が多様化した今、「どうすれば一番いいのか」を決めることは容易ではないので
      結局、「自分が満足できるかどうか」にかかっていて、
      大事なのは、どうすれば満足できるのか考えること、なのかな、と思いました。


    2. 2.

      キノ

      いつもは冗談めいてるけにおさんが、こんな小説をかくとグッとくるものがあります。わたしも同タイトル書こう。


    3. 3.

      けにお21

      ☆ヒヒヒさんへ
      コメントありがとうございます。
      「どうすれば一番いいのか?」ではなく、「どうすれば満足できるのか?」と考えること。
      客観的に自分を眺めて良し悪しではなく、主観的にどうなれば満足できるか、ですね。
      なるほど、そう思います。
      小説も、「良い作品を書くぞ!」と人の目を意識すると書けないが、「自分が楽しめる作品を作るぞ!」または「祭りで、他人の目を欺くぞ!」とワクワク・ニヤニヤしながら書くと、意外に書けるものですものねw
      人生も同じで、自分が楽しめて・満足できる生き方を迷わず歩むことができれば、それが答えなのかもしれません。
      さすがヒットメーカーヒヒヒさん、助言ありがとう!!
      そのように生きていきます!

      ◆キノさんへ
      コメントありがとうございます。
      僕の基本は、日記または私小説です。
      本作にも、部分的に自分を投影させました。
      この先どんな道を歩もうか、考えている最中なのです。
      おお、是非是非同タイトルちゃれんじしてくだされ!


    4. 4.

      鉄工所

      自分を生きる
      とても大切な事だと思いました。

      此処だけの話、家庭や家族は
      「オマケ」見たいなもので…

      もっと大きく生きていいんだと思います。


    5. 5.

      けにお21

      茶屋さんへ

      読んでいただき、ありがとうございます。
      茶屋さんのは、死後に、宇宙へと向かう老人の夢。
      僕のは、生前に、夢を追いかけ、死ぬ老人。
      共通点は夢を捨てず重要視していることで、相違点は生前か、死後かの違いですね。
      ルートは異なれど、共通点である、男にとってロマン(夢)は大事、ってとこは一緒。
      これからも、ロマンを追いかけていきましょう!


    6. 6.

      けにお21

      鉄工所さんへ

      読んでいただき、ありがとうございます。
      此処だけの話ですねw
      偏見かも知れませんが、女性は現実的です。
      男性は、アホです。
      僕は、男性のアホさを愛し、女の現実主義に頼って生きています。


    7. 7.

      茶屋

      自分の作品を投稿してから読んでいますが
      少し私の作品の別のルートみたいな感じがして(勝手に思ってるだけです、すみません)
      少し感慨深いです。