秋色ビスケット

  • 超短編 654文字
  • 日常

  • 著者: 1: 9: けにお21
  •  僕はビスケットが好きだ

     

    花火の日にとうちゃんに買ってもらった秋色のビスケット

     

    花火といえばかき氷のはずなのに、父ちゃんが持ってきたのはビスケットだった

     

    とうちゃんいったいどこで買ってきたんだろう、って思った

     

    でも、その日とうちゃんと食べた秋色したビスケットは本当に、本当においしかったんだ

     

    僕ととうちゃんは川のそばの、しばふの上に座って、ビスケットをかじりながら、花火を見物したんだ

     

    その日の花火はちょっと変で、真夏の雪みたいに空から火花がふってきてきれいだった

     

    でも、僕は「あちあち」ってなったんだ

     

    とうちゃんも「あちあち」って飛びはねていたので、とても面白かった

     

    そして、とうちゃんは突然、僕におおいかぶさったんだ

     

    僕はとうちゃんに、何するんだ重いよっておこったんだ!

     

    そしたら、ばーんって大きな音がして、とうちゃんは吹き飛ばされたんだ

     

    とうちゃんを見ると、真っ赤になっていた

     

    とうちゃんは、真っ赤な炎でごうごうともえていたんだ

     

    僕はそれを見て、きっと、とうちゃんは今から死体になるんだって思った

     

    目がさめると、僕は病院のベットにいて、体を見るとほうたいでぐるぐる巻きにされていたんだ

     

    ベットのそばにいたかあちゃんは、とうちゃんの写真を手に持って、わんわんと泣いていたんだ

     

    それで、僕は、やっぱりとうちゃんはあの日に死体になったんだ、って分かったんだ

     

    僕は今でもビスケットが好きさ

     

    でも、花火の日にとうちゃんが買ってくれた秋色したビスケットだけは、どこにも売っていないんだ

     

    僕は、とうちゃんと食べた秋色ビスケットを食べたい

     

    ぜったいに探し出すんだ

    【投稿者: 1: 9: けにお21】

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    コメント一覧 

    1. 1.

      けにお21

      これは残しておきたい。

      過去作を探すけど、残したくないものばかりで呆れています。