声がする。
オモシロイ
オモシロイ
腹が立った。
面白いものか
何が、面白いものか
この世に面白いものなどない
人生は、ただただ
悲しいだけだ
虚しいだけだ
なのに、
この声ときたら、
さっきから、
オモシロイ、オモシロイ、
繰り返し、
耳元で何度も囁く
いい加減にしろ
いい加減にしてくれ
面白くない
ナニモオモシロクナイ
また聞こえる。
オモシロイ
面白いぞ
「もう、いい加減にしろ!頭が割れそうだ!気が触れそうだ。何度も何度も面白いと。そんなに言うなら、そのオモシロイとやらを見せてくれ!見せてみろ?」
一週間前に、母を亡くし、何もかもが嫌になり、何もかもが虚しく、何もかも悲しく、何もオモシロイことなどなくなった私。見せれるものなら、そのオモシロイものとやらを見せてみろ。やれるものなら、やってみろ。
突然、地が裂け、轟音が響き渡った。
その裂け目から、角を覗かせ、顔を出した。
「汝、悲しむことなけれ、汝、悲しむことなけれ。人生はオモシロイ、オモシロイ。母とも、オモシロイことあっただろう。思い出せ、思い出せ!もう泣かないで。もういい加減泣くのをやめて、坊や。」
地上に姿を現した白龍はそう言うと、瞳から大粒の雫をこぼした。
母に似たその龍は、目の前の空を泳ぎ、やがて長い体を震わせ、天へと駆け登った。
その姿、面も白けば、尾も白かった。
僕はやっと泣き止んだ。
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