あれは、明くる明くる明くる日のあの日のことだった。
俺は頑張っている。
とても頑張っている。
俺はばちくそ頑張っとるったい!
先程、大きな仕事をやり終えた自分。
雨の日も雪の日も槍の日も頑張ってる自分。
失敗して凹んでもまた這い上がる自分。
部下が長らく休んで、その分二倍働く自分。
二倍働いたせいで、働き過ぎと叱咤された自分。
通勤電車の中、トイレに行きたくなり、変な汗をかきながら必死に堪える自分。
未来への明るい展望が無いのに前を向き歩き続ける自分。
ああ、自分は、何と健気で、逞しいことか!
時にはキュートに、時には猛々しい自分。
偶にはそんな自分に、ご褒美を与えても、よかじゃなかか?
いや、よかでしょ!
いや、よかろうもん?
という事で、俺は俺に褒美を与えることした。
さて、自分に何をご馳走しちゃろうか?
肉か?
はたまた
魚か?
いやいや待て待て、早まるなじぶん!
こう言った時に、すぐ食に走るのは悪い癖。安直というもの。浅はか!
美食では、身体に一時的な喜びを与えるに過ぎん。
食では、プリチィな自分に褒美として弱い!弱すぎる!失礼!
だとしてー
他に何があるやろーかー?
自分への褒美の最適解は何やー!?
・・・
おぅおぅ、アレがあったったい!
アレったい、アレ。
海、山、川、神社、遺跡、温泉。
そや、旅や!
旅なら、どうや?
旅に出るまでのワクワク感。
旅での様々な刺激。
旅後の余韻。
これは、自分へのよか褒美やなかかー
最適解?
しかしー、
しかしー、ばってんー
旅が済めば、なんてことはないやなかか。
旅の喜びも束の間、言うてみれば短いばい。
旅は、食よりは、多少マシな褒美やろうが、コレも一時的な道楽に過ぎんやなかかー
違う!
こんな褒美では、普段頑張っている自分に対して、無礼!
こんな褒美では、俺に、こう言われるやろう。
「頑張っている俺に対して、こんなものしか与えられないのか? 俺の俺に対する想いはそんなものか?」
とね。
下手すると、俺は俺に呆れられ、俺は俺から三行半を突きつけられるやも知れん。下手すると、俺は俺にボテクラサレルかも知れん!
そんなこっつは嫌たい!
きばって、最適解を導け、俺ー!
考えろー!
もっとこう、俺へのグッとくる褒美やなかかー
一時の逢瀬的な快楽ではなく、「持続可能な褒美」、つまり「サステナブル ホウビ」が必要や!
あるはずたーい!
〜明くる日〜
と言う事で、俺は布団屋に行った。
俺は、布団屋の店員に手を引かれ、中に展示してある最上級のシーモンキーのベットに試しに横たわった。
それは正く、フワフワの羽根に包まれて、宙に浮いているような、雲にいるような感じがした。
コレで寝るとさぞかし、日々の疲れを取ってくれそうだなあ。
コレや、自分へのサステナブルホウビはコレしかなか!
俺の目に狂いはなかったい!
俺は即決で、店に在庫があったシーモンキーの高級ベットを家に運んでもらい、家にあるパイプベットを引き取ってもらう手続きを取った。
俺は、布団屋に送料込みで14万円を支払った。
この褒美は高額だが、飯や旅と言った後に残らない物ではなく、未来へと残る持続可能な褒美なので、散財ではなく、自分史上最高の家宝を購入したと思えた。
〜明くる日〜
自宅にシーモンキーの高級ベットが届いた。
そして同時に、長らくお世話になったヘトリのパイプベットと、へたったマットレスとオサラバすることになった。
シーモンキーのベットを部屋に入れてもらうと、大きくて、部屋の半分くらいがベットに占領された。
しかし、気にしない。
最高級なのだから、重量感があり、サイズも、こんなものだ。
コレが自分へのサステナブルホウビ、最適解褒美だ。
さて、挑むか?
まて、まて、早まるな自分。
その前にやることがあるやろーもん!
俺は、湯を沸かした。
浴室に入ると、俺は丹念に身体を洗った。
シーモンキーの14万円ベットは、さながらベット界の王である。
今から、その王に身を委ねるのだから、汚れたままでは失礼である。
隅々を清め、体内の邪気を全て追い払ってからではないと、ダメである。
王様に対して粗相があってはならない。
そう、今夜が、記念すべき俺とシーモンキー王との初夜になるのだから。
俺は一旦、浴室を出ると、台所から塩を持ち出して浴室に戻った。
俺は、念入りに身体に塩を刷り込んだ。
古来より塩は邪気を祓うと聞くからだ。
塩まみれになった俺は、浴室を出て、王と再会した。
王は、清らかになった俺を見て、微笑んだ気がした。
「よし!よかろう」との声が聞こえた。
こうして、王から侵入の許可を得た俺は、この日のために準備していたピンクのシルクのパジャマを着込んだ。
俺は、今まさに、王の夜伽を務めるである。
俺「失礼つかまつる」
王「うむ、入れ」
〜明くる日〜
起きた俺は王と対面し、とても気恥ずかしくなった。
昼過ぎ。
辛麺卵落としで、腹ごしらえをした俺は、部屋の多くをシーモンキー王が占領したため、要らない物を捨てて、部屋にスペースを作る事にした。
その片付けのため、俺は腰を屈めて、中腰になった。
と、その瞬間。
グキッ
背後に忍び寄られた魔女から、痛烈な一撃を喰らったのであった。
コメント一覧
ひひひさんへ
読んでいただき、ありがとうございましたー
ヤッパリたまには自分にもご褒美与えないとね!
まさか、実話だったりします?笑
「サステナブル ホウビ」で笑ってしまいました。
あと、この主人公、旅行も絶対したでしょう! 九州の方言が途中まで続いていて、最後急になくなるところが実に怪しいです笑
まさか、私のギックリ腰関係の魔女の一撃が採用されるなんて、嬉しいやら、悲しいやら😀😢
お題出し、ありがとうございます!
ちなみにわたくしのギックリ腰。
歳のせいか、治るまで一ヶ月も掛かりました。毎週、整骨院通いしてね。整骨院のスタンプカードがもうすぐいっぱいになりそうです。
さて、実話か否かについて、全くの実話では無いですが、実話も織り交ぜております。ギックリ腰、わたくしヤタラと詳しいので😀
九州弁は、途中まで頑張ったのですが、途中から面倒くなりました😀
ぶぶー!
九州旅行した訳ではないです。
わたくし産まれは九州ですたい!
しかし、もう、ダイブ九州弁忘れているねー、言葉が出てこなくて、本作、描くのに苦労しましたよ😀
サステナブル ホウビ、思わず笑ってしまう名前でありながら、
その奥に深い洞察が潜んでいるようにも思われます。
持続的なホウビ。大事。笑いました。