コロナ明け

  • 超短編 1,038文字
  • 日常

  • 著者: 1: 9: けにお21
  • やっと暗くて長いトンネルを抜けたようだ。
    陽が差し込んできた。

    せっかく明けたんだから、おもろい事をしたい。

    休日に自転車で街中に飛び出してみた。

    シャッターが閉まっていた飲食店には灯が灯り、店の中から、賑やかしい声が漏れていた。

    コレコレコレだよ、活気が欲しかったんだ。

    一時間ほど、街中を走り、疲れた。

    そして、一時間ほど前にはあれほど、物珍しかった活気も、徐々に慣れて、飽きた。

    コロナ禍で、ずっと欲しかったものは、こんなものだったのか?

    期待を膨らまし過ぎて、現実を目の当たりにすると、然程でも無かったって奴である。

    牢屋で食べたかった甘いキットカット。
    夢にまで見たキットカット。
    しかし、娑婆に出て、胸躍らしてスーパーでキットカットを目の当たりした瞬間、夢から覚めて、キットカットには興味がなくなる。
    いつでも手に入れようと思えば、手に入れることが出来ることに気づいたからである。
    まさに、そんな感覚であった。

    とりあえず、目的もなく自転車で走り回ったが、さほどオモロい事が見つからないまま、家に帰ることにした。

    実は、先ほどから、尿意がし、我慢していたので、早く帰る必要もあった。

    家に着き、玄関のドアを開けて、トイレの前まで来て、ハタと気が付いた。

    俺は、コロナ禍が明けたので、面白い事をしたかった。

    しかし、どうだろう?

    勢いよく外に飛び出したが、大して面白いことは見つからず帰宅して、今用を足そうとしている。

    こんな事で良いのか?

    これでは敗戦ではないか?

    俺は負け犬か?

    このまま用を足して良いものか?

    今、コロナ禍が明けて、気持ちが昂っている。

    もし仮に、最高に気持ちが昂っているこのタイミングで面白いことを出来ないとなれば、一生、面白いこと出来ずに終わるのではないか?との不安に襲われた。

    そうでないだろう!

    俺は負けない!

    よく、考えろ?

    何かあるはずだ!

    そして、トイレの前で猛烈に尿意が高まっている。

    急げ!
    水位が上がり、ダムは決壊寸前だ!

    俺は、焦り、考え、焦り、考え、そして思い出した。

    そう言えば、子供のころはよくお漏らしをして、母に叱られたものだ。

    しかし、大きくなり、お漏らしをしなくなった。

    ここは、初心に帰り、長らく忘れていてたアノ感覚を思い出す必要があった。

    切なくて、情けない、アノ感覚を。

    俺は、トイレのドアの前で、直立ので、着衣のまま、下半身の力を抜いた。

    当初あった勢いは、ズボンの壁に遮られ、したたり落ちた。

    落ちる、落ちる、次々にズボン伝いに落ちていった。

    熱。

    そうか、こんなに熱いものだったのか?

    【投稿者: 1: 9: けにお21】

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    コメント一覧 

    1. 1.

      なかまくら

      間に合わなかったのですね・・・苦笑
      コロナがあって、これから何かを始めるというのもきっかけかもしれまんせんね。


    2. 2.

      けにお21

      やあ、こんばんは。

      年食うと、色んな事をやり尽くして、飽きている。

      そんな時は、子供回帰もいいかもーって作品。

      でも、面倒なだけと言う作品でした。


    3. 3.

      茶屋

      >この疾走感、流石です。しかし、子供らしさと大人らしさとは何なのか、一度主人公は立ち止まるべきでした。
      否、ゴールまで止まっては行けなかった……。


    4. 4.

      けにお21

      茶屋さーん、
      おっしゃる通り、立ち止まるべきでしたねー。

      しかし、あの切ない気持ちは、他ではナカナカ味わえませんぞ!

      ぜひ