男:空が綺麗だなぁ。
女:……月が綺麗とは言って下さらないんですね。
男:えっ? あ、あぁ~! 空全体が綺麗だと思ったものだから……。
女:分かってます。あなたはいつもそう……。あなたの見る世界はいつだって大き過ぎるんです。
男:いや、俺なんかつまらない……。
女:許しません! あなたという人間を悪く言うことは、あなた自身であっても許しません!
男:ええ?
女:たとえ恐竜が相手だって、噛みついてやるって、決めたんです。
男:それは、おっかないなぁ~。
女:なにが可笑しいんですか?
男:いえ、別に。
女:笑い、こらえてるぅ~。
男:すみません。
女:もぅ。
男:唐突なんですけど。
女:はい?
男:月が綺麗です。
女:え?
男:もう、綺麗で綺麗で仕方がありません!
女:えええ~?
男:以上。
女:わ、私だって!
男:はい?
女:負けず劣らず、ずっとずっとずーーーーっと前から、月が綺麗でしたっ!
男:ありがとう。
女:もっと驚いて下さいっ!
男:ありがとうっ!
女:ふっ、「ありがとう」って言って、驚く人なんて、いないでしょう?
男:そうだね。
女:あれ? 今、ここの家の窓、開いた?
男:走ろうか?
女:え? ちょっと? 待って! ズルい!
ト書き:間を開ける。
男:あのさ?
女:なに?
男:カレー、作れるようになった。
女:カレー、作れなかったのよねー。
男:ちゃんと、食べれるよ。
女:我慢して、食べてない?
男:大丈夫。おいしいから。
女:ホントにぃ?
男:だからさ。
女:うん。
男:カレー……食べにおいでよ。
女:いい……けど?
男:それで、俺、カレーはすごく大量に作って1週間くらいはカレーを食べ続けるんだ。
女:へ、えー、え? だから?
男:だからさ。金曜の夜にカレーを作って、そこから、土曜、日曜とカレーを食べ続けよう。
女:はい? え? 金、土と、お泊り?
男:うん。
女:え? それ、お母さんには、なんて言うの?
男:そりゃあ、「金曜日の夜にカレーを大量に作って、そこから、土曜日、日曜日と、カレーを食べ続けなければならいので、金曜、土曜とお泊りしますぅ~」って。
女:「しますぅ~」って? ふふっ。そ~れは、確かに、許すしか、ないわよね~。了解いたしました。
男:カレーに何入れよう?
女:何入れる?
男:豆腐と油揚げと……。
女:ちょっとちょっと……、それじゃ味噌汁でしょ?
男:入れない? あ! 味噌汁も作ろう!
女:カレーなのに?
男:いや、俺の親父、味噌汁、大好きでさ。飯がなんでも、毎日、味噌汁付きで、カレーの日でも、味噌汁付きだったんだ。
女:じゃあ、お味噌汁も作ろう! 豆腐と油揚げと、長ネギも入れよう! お鍋は足りる?
男:足りる。
女:駅に着いたね。
男:家まで……。
女:送ったら、あなたは、どうやって帰るのかなぁ?
男:気を付けてね。
女:うん、じゃあ、週末。
男:うん、週末。
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