人:えっ? あなたは誰?
女神:私は、この泉の女神です。
人:はぁ。
女神:あなたが落としたのは、金の斧ですか? 銀の斧ですか?
人:えっ? いや、何も落としてませんが?
女神:そこは、ノリと付き合いで、落としたことに、しましょうよ。
人:はぁ、じゃあ、普通の斧です。
女神:あなたは、正直者ですね。褒美として、この金の斧と銀の斧を差し上げましょう。
人:おっもぉおっ! 重たい! 正直者って、斧を落としたっていうのが、そもそも、嘘なんだけど。
女神:ここに、来る途中に、急カーブがあったと思うんですけど。
人:ありましたけど?
女神:あなたが、そこで落としたのは、金のスピードですか? 銀のスピードですか?
人:スピードに、金とか銀とか、あるんですか?
女神:どうなんですか?
人:それは、普通のスピードですが。
女神:あなたは、正直者ですね。褒美として、金のスピードと銀のスピードを……。
人:要らない! なんか分からないけど、嫌な予感しかしないから、要らない!
女神:あなたが、ここ2週間で落としたのは、金の内蔵脂肪ですか? 銀の内蔵脂肪ですか?
人:そんなの普通の内蔵脂肪に、決まってるでしょう?
女神:あなたは正直者ですね。褒美として、金の内蔵脂肪と銀の内蔵脂肪を、ゴッソリ付けて差し上げましょう。
人:要らねーよっ! 内蔵脂肪自体、すっげー、迷惑だし、金と銀って、どんだけ重いと思ってんだよ? 体重どんだけ、増えるんだよ? それに、金属探知機に、引っかかるから、一生、飛行機に乗れないよ?
女神:……ああ〜、あなた、頭いいですね〜。
人:あなたが、頭悪過ぎるの!
女神:あなた、この前、ナンパに成功しましたよね?
人:はぁ。
女神:あなたが落としたのは、金のいい女ですか? 銀のいい女ですか?
人:「落とす」の意味がぁ!
女神:いかがですか?
人:普通のいい女ですけど?
女神:あなたは正直者ですね。褒美として、金のいい女と銀のいい女を、差し上げましょう。
人:ん? それ、金髪と銀髪の美女とか?
女神:いえ、身体が、金と銀で出来ています。
人:人間じゃないのかよぉ?
女神:売り飛ばすと、かなりの重量ですよ?
人:それ、意志があって、会話とか、出来るんだよね?
女神:そうですが?
人:売り飛ばせないよ、そんなもの。
女神:溶かすとき、溶鉱炉に沈みながら、サムズアップします。
人:余計な芸を仕込むんじゃないよっ! なんなのそれ?
女神:基本は、押さえておかないと。
人:とにかく、要らない。
女神:あなたが一連の騒動で落としたのは、金の評判ですか? 銀の評判ですか?
人:……えー、はい、確かに、やらかしました。評判落としました。
女神:それで?
人:落としたのは、普通の評判ですが?
女神:あなたは正直者ですね。褒美として、金の評判と銀の評判を、差し上げましょう。
人:要らない! なんか要らない! わけ分からないけど、本能が「拒め!」と全力で言っている!
女神:そうですか。
人:もう、帰る! ……あっ!
女神:泉に落ちましたね。
人:濡れちまった。
女神:あなたが落としたのは、金のあなた自身ですか? 銀のあなた自身ですか?
人:ややこしいよっ!
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