躯があった。
街の隅に敷物をひいて横に倒れている躯。
自分はそれを見ていた。
躯にはハエが集り腐敗した臭いを出している。街の隅であるが人は行きかっている。
自分は躯から目を離して人の行きかってる方を見る。人たちは忙しそうに歩いている。
まるで自分と躯が現実にいないような感じである。
この躯は街の一部か
自分は再び躯を見る。躯の前には空の缶詰がある。中身を除いだが何も入ってない。
人たちにとってみればこの躯の存在は単なる風景か。
自分は思った。そしてこの躯を見ている自分も風景の一部だと見られてるだろう。
「しかし、この躯にも意味がある」
自分は言葉にする。その言葉の発する先には自分の中にいる躯の魂がいる。
自分の中にいる魂は黙っている。
「あんたは自分の躯を見たかった。これが現実だ。誰もあんたに興味はないみたいだな」
自分は体内にいる魂に言う。
「......」
魂は答えない。しかし魂は何かに満足したのか自分の体から消滅するように消えた。
「満足したか......」
完全に自分の中で魂が消えたことが分かるとふぅとため息をつく。
「躯か」
自分は躯から目を逸らして空の缶詰を見る。
「餞別だ」
空の缶詰に小銭を入れる。
「これでこの躯にも意味ができるだろう」
自分はそのまま躯を背にして歩き始める。
自分は魂の運び屋。その躯の過去には興味はない。だけどすべての存在には意味はあると考える。
たとえどれだけ人たちに無視されようと。
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