「これから、どうする?」
無理に目を閉じて、眠ったふりをしていたけど、そんなのバレていた。
「んー、シャワー浴びて、そろそろ帰ろうか」
大袈裟に伸びをして、なんでも無いように言ってみる。
まっすぐ天井を見上げていても、彼が私を見ているのが分かる。
「って、そういう事じゃないよね」
私も、彼を見つめる。
彼が困っている。
「どうしたい?」
質問を質問で返してしまった。
10個も年下男子を困らせておいてなんだか楽しくなってしまう。
なかなか、かわいいじゃないか、と。
私達は、同じベッドで数時間を共にした。
「今日の事は無かったことにしよっか」
私にも恐らく彼にもパートナーはいないし、だから誰に咎められる事もなく、大人だから、10も年下の職場の男の子と朝を迎えることもあるよ、ただ、それだけ。
「……」
「大丈夫、一度寝たくらいで責任とれなんて言わないから」
彼の前髪に、そっと触れる。
あまり整えられていない濃いめの眉。
眉尻の辺りに薄いホクロがあった。
「ナツさんは、僕の事嫌い?」
今のこの状況に、そぐわない質問だと思った。
何を考えているんだ、とも…。
ねぇ、ちょっとむこう向いて、と彼を横向きにさせる。
彼の背中を包み込むように、腕を回した。
「…私、好きな人にこうするの、好きなんだよね」
「僕も、好きな人にこうされるの好きです」
偶然ですね、と言ういい方はまるで仕事終わりの「お疲れ様でした」と同じトーンだ。
返事の代わりに、耳たぶをつねってやった。
「じゃあ、僕の事が好きって事でいい?」
彼が私の方に向き直る。
今度は、彼が私の前髪に触れる。
「僕達、同じ所にありますね、ホクロ」
彼が、私のホクロにそっと口づけた。
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