死ぬのは簡単な海

  • 超短編 254文字
  • 日常

  • 著者: ちくたく
  •  海が死んだのは五度目だった。その度に甦る。一度目は名の通り遠い海に入水したし、さっきは腐乱した。しかしながら、いつもいつも戻される。時間が引き戻されるわけではない、生に引き戻されるのだ。だから、一度目は溺れ続けて苦しかったし、さっきまでウジがたかって気持ち悪かった。どうして死ねないのかはわからなかったし、どうして死にたいのかもわからなかった。だけど、また死ぬんだろうな、ぼんやりと海は考えた。六回目はどうなるんだろうな、ぼんやりと考えていたらやがて海は眠くなって、横たわった、やがて彼女は猿の夢を見て眠る。

    【投稿者: ちくたく】

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