私が通う中学校には、面白い先輩達がいる。
いつも奇想天外な事をしてはみんなを笑わせてくれる。
生徒の味方であり、教師の敵となる様な存在だ。
その先輩の中でも代表的なのは、水先輩である。
水先輩は、先生の車に卵をぶつけたり(笑)、学校の廊下まで自転車こいできてしまう様な問題児(笑)
そんな水先輩の隣にいて企画を提案しているのが田邊先輩。
どこか遠い目で学校を見ては、時々先生を睨んでいたりするのを見かける(笑)
そして、私が田邊先輩に恋をしているのは周知の事実。
彼のオーラは、唯一無二で独特でとても神秘的に見える。
また、私がオーボエの練習をしていると時折だけど目が合うことがある。
恥ずかしくてすぐ顔を背けるけど、ふとした拍子にまた視線が重なるの。
・・・・・・(´・ω・`)
だけど、もう冬。・・・もうすぐ卒業しちゃう。
せめて、ボタンが欲しい。田邊先輩のボタンが欲しい・・・。
「「お疲れ様でしたーっ!」」
部活が終わり、杉谷がオーボエをケースに仕舞っていると友達の古田が声を掛ける。
「最近、顔浮かないよね。なんかあった?」
杉谷は徐に目尻と口元を下げて答える。
「だってぇ、田邊先輩卒業しちゃう〜〜〜〜」
古田は微笑むと、「またそれか」と茶化す。
「ボタンほしいよぉ〜〜〜」
杉谷は叫んでいると、後ろの席に座っていた秦先輩が不敵な笑みを浮かべながら声を掛ける。
「おぉっ!誰のだぁ!?」
秦先輩は、吹奏楽部の後輩からネタ的な意味で慕われている、杉谷は入ってくんなよという嫌な顔を向ける。
「な、なんだよ!僕だって混ぜろよこのこのぉ〜!誰のボタンが欲しいんだぁ〜??」
うっぜぇーという顔で引きつっている杉谷に対して、此処はチャンスと悟ったのか古田は声を上げた。
「先輩、杉谷、田邊先輩のボタンが欲しいらしいですよ。」
「え、なに!?まじで?」
「変なこと言わないでくださいよ!・・・まぁ、秦先輩は接点ないでしょうけど。」
「田邊の大親友であるこの俺に何を申す!」
杉谷は思わず大きく口を開けて、暫くぼーっとする。
「いや、ないない。」
目を瞑り手を振りながら、秦の言葉を否定する。
「はい、カッチーン!じゃあ、明日の朝俺言ってやるよ。」
「え、本当に友達なんですか?」
忽ち杉谷の目は明るくなり、秦に詰め寄る。
「ちか、近いよ。惚れてまうやろ。」
「やめてください、無理です。」
「ひど、酷いよ。けど、俺に任せてよ。」
「ありがとうございます、秦先輩っ!」
「うぉっ!そんなに田邊のこと好きなんだ。」
「いやぁーーーへへ。」
秦は古田の方をチラリとむくと。
「きもいね、杉谷。」
「ですよね。」
「けど、絶対伝えてくださいよ!」
「任せなさないっ!」
この時初めて杉谷は、秦のことを一つ上の先輩なんだと自覚したのは言うまでもない。
翌朝、杉谷の下に雷が落ちた。
「田邊も杉谷のこと気になってるらしいぞお!!!」
ズッガーン!まさしくそれは、青天の霹靂だった。
杉谷は、何から理解をして良いのか戸惑ったがまず秦先輩が一つ歳の離れた学年の教室に居るのがおかしいし
言っていることもおかしいようだった。
昨日、私ボタンが欲しいって伝えただけで、あれ・・・?
「どういうことですか??」
「あれ、あんまり喜んでないの?」
以下、秦回想----
秦「よおー、田邊。今日もなんか死んだ目してんなあ。」
田「おお、ハイブリッジか。」
秦「下の名前で呼ぶのやめろや。」
田「最近元気か?」
秦「まぁ、ぼちぼちだ。そんなことより耳をかせ。」
田「お前に耳貸したくねえよ。汚されそう。てかなんかすげーニヤニヤしてんな。きもいぞ。」
秦「・・・(´・ω・`)」
田「それで、何か用なの?」
秦「(´・ω・`)」
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「訳がわかりません。」
杉谷から思わず静止がかかる。
「要所だけお願いします。」
以下、秦回想----------
秦「なんか、お前のこと好きって言ってる子がいるんだ。」
田「ふむ。え、まじ?」
秦「うん、それも結構大ファンだ。頭おかしいよな。」
田「だいぶおかしいけど、その狂い方いいな。誰なんだ。」
秦「おーしえよっかな〜、ど〜しよっかな〜」
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「ちょちょ、何言ってるの。私はボタン」
某議員の真似をしながら、秦は答える。
「えぇ聞こえない聞こえない。」
「殴りますよ。」
「田邊はそんなことする人どう思うかなあ。」
「それでいいから、どうなったんですか。」
「まぁ、その後しばかれて杉谷の名前言ったら。まじで?って顔してて。
付き合えよ〜って言ったら『杉谷は付き合いたいって言ってるの?』って聞いてきたから、ココニイルネ」
「ちょ、えっ、うわ、うわ、え、まじ、うわ、やば」
杉谷が壊れた様子を見て楽しむ秦は急かす様に声を掛ける。
「さぁ、このまたとないチャンス。どうするね!」
「・・・つきぁぃたぃです。」
「カップル成立〜〜〜!!!!!」
秦は大声で叫ぶと、周りから様子を伺っていた女子達が急に詰め寄った。
「え、なになに?」「え、もしかして田邊先輩?」「え、やばくね?」「え、まじで?」「まじか、杉谷!」
「はーい、静粛に!1時間目授業が始まるゾォ〜!!」
秦は群がった女子に向かって、静止を呼びかけるも誰も相手にはされなかった。
杉谷のもとに群れ始めた女子はどんどん数が増え始めた。
「それじゃ、杉谷、俺伝えてくるわ。」
秦は田邊のもとまで走ると、「つきあいたいってさ!」とまた叫んだ。
「うるせえ、殺すぞ。よくやった。」
嬉しさで先ほどまで死んでいたはずの田邊の顔に色味が戻ってきた。
「田邊、なんかめちゃくちゃ嬉しそうだなあ。」
「うん、嬉しい。それで、これからどうしよう。」
「会いに行こうぜ」
「そうだな、よし、行こう。」
田邊は席を立つと、秦と共に杉谷のいる教室まで向かった。
学年が異なると階も異なるので、階段を登るとすでに異変が起こっていた。
杉谷のいる教室の前に無数の人だかりができていた。
「おいちょっと、秦。やばくね。」
「やばいな、俺呼んでくるわ。」
「うん・・・頼むわ。・・・なあ秦、ありがとな。」
「おう!!」
杉谷は一人、田邊が待っている階段のもとにやってきた。
杉谷と田邊は向かい合い、互いに口を閉じている。
暫くの時間が経過した後、田邊は顔を上げて杉谷に声をかけた。
「あの、僕のこと好きなの?」
杉谷は恥ずかしさと興奮で立っていられなくなり俯きながら階段に座る。
「・・・はい。」
「うわあああああ!まじか・・・。よし、それじゃ僕の方から告白するね。」
「・・・はい。」
「立てる?」
田邊は声をかけると、俯いている杉谷のもとに手を伸ばす。
無言のまま、杉谷は田邊の手を握ると立ち上がった。
「なんで泣いてるのさ。」
「その、うれ、しくて。」
「はは、じゃあ此れからは毎日笑える様な日々を一緒に送ろうな。」
「・・・はい。」
「一目惚れしてました。初めて話したけど、声や仕草も全部好きです。付き合ってください。」
秦は陰でこっそりその様子を眺めながら悦に浸っていた。
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