星が知る #2

  • 超短編 1,175文字
  • 日常

  • 著者: 1: ごどり

  •  とある街に、地面を見つめながら死を願う少年がいた。
    少年のなは、琥珀。
    学校では、誰とも喋らず誰からも相手にされない。
    容姿こそいいが、成績は低迷し見るに惨めだ。
    家族とも仲が悪く、一刻も早く解放されたいと願っている。


     灼熱の様な夏が過ぎ、気づけば街一帯が秋色に染まる頃。
    僕は、教室の隅からぼんやりと外を眺めていた。
    「たちばなぁっ!」
    現代文の教師が僕に向かって吠えた。その様子をみて、ニヤニヤとするモノたちと明から様に「迷惑だ・・」と表情に浮かべるものたち。
    「あ、はい。何でしょう。」と僕が答えると「何でしょうではない!話を聞いとらんのかあ!」
    「・・・すみません。」
    「後で職員室に来い!!」
    「はい・・・」
    こんなやり取りが最近、どの教科でも増えてきた。
    椅子へ座り、外を封じられてしまった僕は辟易としながら黒板を眺める。
    そんな僕の背中に、夥しい数の視線が集中している。
    何かものが投げ込まれるのではないかと、背中を意識し過ぎて相変わらず授業に集中できない。
    けれど授業を真面目に受けなければ、真面目に授業を受けている人の邪魔になる。

    ”何をされても、強く生きなければならなかった”

     憂鬱な授業が終わると、更に憂鬱な間休憩が入る。
    ぞろぞろと、僕の席へ向かって友達だったみんなが集まってくる。
    僕を囲むと、四方から罵詈雑言を浴びせられる。
    「しね。」「学校くんなよ。」「まじで迷惑。」「何で生きてるのか不思議。」…。
    泣き崩れそうになる顔を腕に埋めて、さりげなく耳を塞いでいた。
    響也がそんな僕を覗き込む様に顔を近づけて、「しねよ。」と言った。

    ”死にたいよ。”

     憂鬱な学校が終わると、そそくさと家にまで帰る。
    家に戻り、今日もなんとか乗り越えたとリラックスしていると
    「ただいまくらい言いなさいよ。」不機嫌なお母さんがいた。
    「ただいま。」
    最近、家族とのコミュニケーションがうまくはかれずお母さんはそんな僕に風当たりが強くなっていた。
    何かを振り払う様に、自分の部屋へと駆け込む。
    叩きつける様に鞄を床へ落とすと、ベッドに身を委ねる。
    (夢・・・じゃない。夢・・・じゃないんだ。)
    少し前まで、あんなに仲が良かったのに。何が原因で、何がきっかけで僕は・・・。

    ”お母さん、ごめん。こんな僕で。”


     紅葉が舞い、銀杏の葉が路面を彩る頃。
    俺は皆んなといつものように琥珀の悪口を駄弁っている。
    「今日の琥珀は傑作だったな。」
    「あいつ、腕ぴくぴくさせながら寝たフリしてやがった」
    「だっさ、あいつまじだっさいわ。」
    「今頃家に帰って泣いてんじゃね。」

    『あははははははははは』

    「それより今から俺んちで、マリカしようよ。」
    「おお、いいじゃん。大輔はどうする?」
    響也は俺が行くかどうかを尋ねてくる。
    俺が行くといえば、ついてくるつもりだろう。
    この中心にいるという感覚、堪らないな。
    「行くよ、皆んな行こうよ。」

    ”ざまあみろ、琥珀”

     

    【投稿者: 1: ごどり】

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