発酵人間の噂

  • 超短編 486文字
  • 同タイトル

  • 著者: 3: 茶屋
  •  発酵人間て知ってる?
     あぁ最近よく聞くよね。噂が噂を呼ぶってやつだ。
     僕が務めている新聞社でも今はこの『発酵人間』の話題で持ちきりだ。

    「発酵人間について新たな情報がでました」

    「でかした。それでどんな情報だ?」

    「運が無いそうです」

    「それは薄幸だ」

     えっ? くだらないって。実際物事なんてくだらないことを、面白そうに言ってるだけさ。

    「発酵人間について新たな情報がでました」

    「でかした。それでどんな情報だ?」

    「部数はいまいちなようです」

    「それは発行だ」

     また、怒られた。しかし、だれも発酵人間について知らないんだからしょうがない。
     そもそもなんで話題になってんだ。

    「編集長、そもそも発酵人間ってなんですか?」

    「そりゃあ、お前決まっているじゃないか。一番それっぽい発酵人間が発酵人間なんだよ」

    「はぁ?」

    「誰も理由なんて知らないさ。一番納得できる『発酵人間』を叫んだやつが正解さ」

    「なるほど編集長、いつもと同じですね」

    「そうとも、いつもと同じだ」

     というわけで、なんかそれっぽいものを発酵人間とした。

    「編集長、発酵人間売れています」

    「君、一体何を売ったんだ?」

    「えぇ、編集長それっぽいものですよ」

    【投稿者: 3: 茶屋】

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    コメント一覧 

    1. 1.

      なかまくら

      編集長と編集の阿吽の呼吸ですね! コミカルで楽しいです。
      言った言葉が意味を越えていくのは面白いですね。


    2. 2.

      茶屋

      >感想ありがとうございます。言葉が重なったり、意味が重複する瞬間のシナジーにカタルシスを感じます。
      そんな文章が書きたいなぁ。