三年付き合った彼と別れたのは、コロナウイルスがなかなか終息しないとか、今までに経験したことない大雨が地元を襲ったとか、35度を越える猛暑日が何日も続いたとか、そんな事とは全くもって関係なかった。
けれど、それらのせいにでもしないと、私は永遠に理由を探してしまいそうだった。
「いや、いや、アイツのせいでしょ、浮気してたんだから。しかも浮気相手に本気になっちゃったんだから」
そうだ、浮気されて捨てられたんだ…
"やっぱりやり直したいって言ってきても、絶対寄り戻しちゃダメだからね、じゃあね"
一方的に通話を切る友人は、とても忙しいらしい。
でも、日に一度は連絡してくる。
心配してくれているのだ。
「これ、家に残ってた荷物」
「捨ててくれて良かったのに」
勝手に人の物を処分したり出来ない事を分かってて、彼の家に私の物を置いてきた。
考え直してとすがってしまいそうなのは、私の方だ。
「あ、このTシャツ探してたんだ。ありがと」
「そっか、良かった。お前ってさ、いっつも何か探してたよな」
「え…そう、かな…」
"じゃあな"
彼は自分で注文したアイスコーヒーを少し残し、帰って行った。
いつも何か探してる。
確かにそうだ。
彼を好きだった理由。
彼の心が離れてしまった理由。
これから私は、一人で何を見つけられるのだろうか。
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