夏の終わりのさがしもの

  • 超短編 540文字
  • 恋愛

  • 著者: bbren
  • 三年付き合った彼と別れたのは、コロナウイルスがなかなか終息しないとか、今までに経験したことない大雨が地元を襲ったとか、35度を越える猛暑日が何日も続いたとか、そんな事とは全くもって関係なかった。
    けれど、それらのせいにでもしないと、私は永遠に理由を探してしまいそうだった。
    「いや、いや、アイツのせいでしょ、浮気してたんだから。しかも浮気相手に本気になっちゃったんだから」
    そうだ、浮気されて捨てられたんだ…
    "やっぱりやり直したいって言ってきても、絶対寄り戻しちゃダメだからね、じゃあね"
    一方的に通話を切る友人は、とても忙しいらしい。
    でも、日に一度は連絡してくる。
    心配してくれているのだ。

    「これ、家に残ってた荷物」
    「捨ててくれて良かったのに」
    勝手に人の物を処分したり出来ない事を分かってて、彼の家に私の物を置いてきた。
    考え直してとすがってしまいそうなのは、私の方だ。
    「あ、このTシャツ探してたんだ。ありがと」
    「そっか、良かった。お前ってさ、いっつも何か探してたよな」
    「え…そう、かな…」
    "じゃあな"
    彼は自分で注文したアイスコーヒーを少し残し、帰って行った。

    いつも何か探してる。
    確かにそうだ。
    彼を好きだった理由。
    彼の心が離れてしまった理由。
    これから私は、一人で何を見つけられるのだろうか。




    【投稿者: bbren】

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    コメント一覧 

    1. 1.

      退会済み

      言葉が大切に扱われていて主人公に心が入っていく、素敵な文章でした…。
      長編で読みたくなってしまいます。


    2. 2.

      bbren

      かにくり様:読んで頂きありがとうございます‼
      夏の終わりで少し切ない感じに仕上げてみました。


    3. 3.

      zenigon

      理由、もしかするといらないかも、なぁんて感じました。ホントなにが起こるかわかりませんので、事象と自身はちょっと距離を遠ざけるのも一手かなぁとも。読ませていただきながら自問自答したり、良かったです。


    4. 4.

      bbren

      コメントありがとうございます!
      理由いらない、本当そうかもしれないですね💦💦でも、そこまで大人になれなかったりもしたり…です(笑)