私には、頭の上の右側にピョンと跳ねた髪の毛、いわゆるアホ毛がある。
また頭の上の左側にも、ピョンと跳ねた髪の毛、いわゆる天才毛がある。
右と左に跳ねた髪の毛を持つ私は、アホと天才が混ざり、それらが中和されて、至って普通って訳だ。
そこで、思い付いた。
もし、この右に跳ねたアホ毛を切ると私の中からアホが抜けて、天才だけが残るのではないか?、と。
この試みが成功すると、私は天才になれる。
それは、とても嬉しいことだ。
さっそく、机の引き出しからハサミを取り出し、頭の右に跳ねたアホ毛にハサミを近づけた。
いや、まて!
この試みは軽率で、危険ではないか。
今、右に跳ねた髪の毛をアホ毛だ、としているが、実は右の方が天才毛で、左に跳ねた方がアホ毛だったら、どうなる?
私は誤って天才毛を切ることになるではないか!
そうなると、残るのは頭の左のアホ毛だけで、私の中から、天才だけが抜け落ち、100%のアホになってしまう。
それは、恐ろしいし、とても困る。
アホになると、それはもうアホなので、何もアイデアが思い付かず、もしかすると二度と普通にも戻れないかも知れない。
と言う訳で、私は先ほど取り出したハサミを引き出しに戻した。
庭先を見ると、光が差し込んでいる。
見上げると、先ほどまでザーザーと激しく降っていた雨が上がり、太陽を浴びた大気が、天空で七色のアーチを作っている。
私は、右と左に跳ねたアホ毛と天才毛を前後に少し動かし、背から優雅な黄と黒の模様のヒラヒラを大きく広げると、空に向かって飛び跳ねた。
コメント一覧
あぁ蝶って確かにアホ毛ついてますね……触覚をそう使うとは、面白い発想です。
最期の行を読むまで、気づきませんでした。というかそれがわかって読み返しても最後の行を読むまでわからず、
むしろ天才毛ってなんだという新たな疑問が……。とりあえず、アホ毛も天才毛も揃わないと蝶は飛べないと思います。
前半は観念的な話なのかな~と思ってましたがまさかチョウの話とはオチがうまいです。チョウの動きがさわやかでした。
茶屋さんへ
蝶は、後で思いついたのでw
天才毛は、アホ毛があるなら、天才毛があっても、と言った発想でした。
いやー、やっぱり創作って、楽しいね〜
ほわみさんへ
最初、アホ毛と天才毛で遊んでいて、書いてる途中で、その両方の毛が、触覚に見えてきたんだ。
それで、後になって蝶々にしました!
感想、ありがとうございます。
実は猫でした、犬でした、というお話は多いですが蝶でした、と言うのは珍しいですね。
天才毛……そんなものが……。
ひょっとして可愛毛とか面白毛とかもあるのでしょうか(どこへいく
ヒヒヒさんへ
可愛毛、面白毛w
以前、ヒヒヒさんは、爪楊枝さんの真似は出来ても、でんでろさんの真似は出来ない、と言われていましたが、もしかすると、意外に素質があるのではないでしょうか?!
>アホになると、それはもうアホなので、
葛藤が面白すぎて笑いました。
鋏をどうやって取り出したのかは聞かないことにしておきます(笑
なかまくらさんへ
お久しぶりです!
蝶々は、最後に思い付いた事で、後付けなのです。
確かに、お話としての一貫性を持たせるには、ハサミを止めるべきでしたねー
蝶々なら、何で切れば良かったのかなー
ウーン、自然にあるもので、例えば笹の葉などを使えば、シュッとしたらキレそうですねー
蝶の触角だったとは…
ユーモアが効いていて面白かったです。自分の天才毛、アホ毛を認識しているこの蝶はすでに結構天才なのか、この世界の他の蝶も気になります(^^)
かにくりさん へ
感想ありがとうございます!
アホ毛があるなら、天才毛があってもいいだろう、との単純な発想でしたー。
確かに、その事を認識しているのは賢いのかも知れませんね!
他の蝶も、どちらが天才でアホなのか、どちらを切るべき葛藤しているのかも?w
同タイトル、難しいので、あまり参加される方おられないですが、楽しいお遊びだと思います。今後ともよろしくお願いします。